心なごみませ  第48回

「戦争の詩」

山元加津子(在日石川人)

 養護学校で出会った大ちゃん(原田大助くん)は戦争の詩もたくさん作っています。

「戦争は 手と足じゃたりなくて 心まで 持っていくんやな 大好きと思ったり いっしょにいたいと思ったり 心は大事なものやのに みんな持っていくんやな」

 一緒に戦争のドキュメントを観ていたときに、アメリカの兵隊さんが勲章をもらって、ベトナムから帰ってきて、自分の子供を「この子が殺される、殺される」と言ってご飯も食べれず眠ることもできなくなって、心を壊してしまったのを観てつくった詩です。


「悲しくつらい気持ちです 人が人を殺して それが正しいことなんて いったい誰が思うんやろ」

 赤ちゃんを抱っこしているお母さんを、兵隊さんが銃で撃つシーンを観て大ちゃんが「銃を撃った人はつかまるやろ?」と言いました。「戦争だからつかまらないと思うよ」と言うと、「そんなことがあっていいはずない。人が人を殺してるんだぞ」と大ちゃんが言いました。


「戦争は地震じゃないから やめられるはずやろ」

 神戸で地震が起き、テレビに映し出された映像が、戦争のあとのようだと思ったのでしょうか?

 その他にも大ちゃんはこんな詩も作っています。

「戦車と兵器とピストルと… いらんもん 何て作るんやろ」

 きっと最初から人を傷つけたり、殺したりするための道具をどうして作るのか、大ちゃんにはわからないのだと思います。

「殺されるために 生まれてこない 殺すためにも 生まれてこない 戦争は大事なことを 忘れている」

 本当に大ちゃんの言う通りですね。みんなみんな大切な命。でも、戦争は身体を奪い、こころを 奪い、そしてなにもかもを奪っていくんだなあと大ちゃんの詩を読みながら、しみじみ思うのです。