心なごみませ  第41回

「葉っぱの顔」

山元加津子(在日石川人)

 秋のある日、山の方にある小学校のお話会に呼んでいただいて出かけました。玄関に校長先生が出迎えてくださいました。 私が出かけたときはちょうどお掃除の時間。校長先生と歩いていると、通りかかった子供たちが、校長先生の手をぎゅっと握っていったり、背中をぽんぽんと触っていったりするのです。みんな校長先生が大好きなんだなと思いました。
 そのあと校長室に行きました。校長室には、子供たちからのプレゼントが大切に飾られてありました。 木の実や、どこかで拾った石や、可愛い絵や、箱で作った作品など。「僕の大切な宝物です」と校長先生が言われたとき、私は子供たちのことを「僕の大切な宝物です」とおっしゃったように感じました。それからもうひとつ素敵なものを見せてくださいました。それは画用紙に貼られた葉っぱでした。
 一年生の子供さんがある日、校長先生に持ってきてくれたものだそうです。画用紙には可愛い字で「こうちょうせんせい、はっぱがいっぱいだよ」とかかれてありました。 そして、葉っぱには全部マジックで顔が描いてありました。どの葉っぱもみんな笑った顔でした。校長先生はそれがとってもうれしくて、この学校みたいだなあと思われたのだそうです。
 校長室からは登り棒やうんていが見えました。
「子供たち鉄棒しているのを僕に見てほしくてね。見ててねって言いに来て、鉄棒してくれるんですよ。それから、あるとき気がついたんだけど、子供たちが、『校長先生何してるかな?』って思うんだろうね。校長室をのぞきたくて、この部屋の窓際のアルミのところに、子供たちの小さな手の跡がいっぱいついていてね。その様子が想像できてすごくうれしかったです。それからはね、僕はその手の跡を見るのが楽しみなんです」 校長先生はまた、にっこり笑いました。子供たちが校長先生を大好きな気持ちが私にもわかった気がしました。