心なごみませ  第28回

「ソウルの電車」

山元加津子(在日石川人)

 どうしてこんなに道に迷うのでしょう。どうして、電車に乗っても、目的地にたどりつけないのでしょう。反対方向に乗ってしまったり、乗り越したり、あわてて着く前に降りてしまったり・・・。地元の石川県でもそうなのです。東京や大阪では、何度、とんでもないところについて泣きそうになってしまったことでしょう。
 けれど、ソウルの街では、私は電車に乗るのが上手です。いつもは不安でたまらずに電車に乗るのに、ソウルでは電車に乗る前も、乗っている間も、すごく安心できるのです。
 それはソウルの地下鉄の表記の仕方が違うからなのです。ソウルの地下鉄の線は色別になっていて、それはどの地図でも同じ色だし、地下鉄の中の案内も同じ色です。そして、駅にはすべて番号がついていて、駅名よりもその番号が大きくかかれているのです。
 もし、赤の5番の駅にいて、私が赤の2番に行きたいとします。○○方面という場所には、→6とか4←と書かれています。私は迷わず、数字の数が減る4←の方へ進みます。ホームにも矢印が書かれていて、私は、こっちでいいんだなと確認できます。そして、駅につくつど、減っていく数をみながら、あといくつ駅をすぎたらそこの駅につくんだってわかるのです。
 乗り換えだって簡単です。ハングルがわからなくても、駅の中の色の矢印にそってすすめば、赤から青の乗り換えのホームにたどりつくことができるのです。
 このシステムがわかりいいのは、きっと私だけではないと思うのです。養護学校の子どもたちはおでかけが大好き。学校にももし一人で行けたらどんなにうれしいだろうと思うのですが、電車の乗り方が難しいためにそれができないお子さんもたくさんおられると思うのです。
 それから障害を持っておられるかただけでなくて、小さな子どもたちにもお年寄りにも、それから私のように外国から来たものにとっても、それはとても温かく優しい表記のしかただなあと思うのです。
 いつか日本もそんなふうになったらいいなと願っています。