心なごみませ  第25回

「満員バス」

山元加津子(在日石川人)

 今、すごく大きな学校だから、(前の学校は人数も少なくて、列もできなかったけれど)給食の前の手を洗う順番や、給食の順番のときに、すごく長い列ができます。水道も、6つも7つもあるから、いったい列なのか固まりなのかちょっとみたところわからないくらい、混雑しています。
 いつも、列についているのに、知らない間に列の最後になってしまう男の子がいて、その男の子を見かけるたびに、昔のことを思い出します。
 東京や、大阪やそうでなくても、どこでもかもしれないけれど、毎朝毎晩、満員バスや満員電車に乗っている方はたくさんおられると思います。私も、満員のバスに乗って通っていたことがありました。
 高校のとき、私が乗ったり降りたりしていたバス停は、始発から3番目にあるバス停でした。始発の場所には、もうひとつ別の高校があって、帰りのバスはいつもいつも満員でした。あと、何人しか乗れないくらいの満員のバスに、わっと人が集まります。私も乗ろうと思って、列の後ろをついて、進んでいるつもりだけど、いつもなかなかバスには乗れませんでした。すごく満員のときは、足がもつれてころんで、高校のときはころんだりすると、すごく恥ずかしくて悲しかったことを思い出しました。自分はどうしてこんななのかなって・・ずっと思っていました。みんな誰もいなくなって、真っ暗になってから、バスに乗って帰っていました。どうしても早く帰らなければならないときも、たとえば、一番前で待っていたとしても、なぜか、いつも、いつのまにか後ろになって、バスには乗れませんでした。今も「どんくさい」って言われるけれど、ずっと昔からどんくさかったのだと思います。
 給食のとき、いつのまにか列からはじき飛ばされてしまうたっちゃんのそばにいくと、たっちゃんはにって笑っていました。私はうれしくなって、一緒に列に並びました。今日はゆっくりもいいもんだなあと思いました。