●新連載 心なやまもとyごみませ  第1回

「雨の音」

山元加津子(在日石川人)

「秋の空気は つぶの すきまが 大きく見える」「月は やっぱり さびしい目をしてる」私は養護学校の教員をしています。養護学校で出会った大ちゃんはとても素敵な詩をいっぱいつくります。
 ある雨の日、小学校の問題集をぱらぱらとめくっていると、「雨は( )降る、雪 は( )降る、風は( )吹く」の( )に<そよそよ、しんしん、ざあざあ>から言葉を選んであてはめるという問題がありました。大ちゃんはどういうふうに答えるかなと思って、大ちゃんに「雨は降るときにどんな音がすると思う?」と聞きまし> た。大ちゃんは「あっちの雨かこっちの雨か、そっちの雨か?」と言いました。本当ですね、雨が土に落ちたとき、コンクリートのところに落ちたとき、葉っぱの上に落ちたとき、みんな違う音がたてるし、雨の降り始めと激しくなったときにも違う音をたてるのに、私はそんな当たり前のことをすっかり忘れていたのでした。大ちゃんはお部屋の中にいても、あっちの音、こっちの音そっちに振る音と聞き分けているのだと思います。雨は降る数と同じだけの降る音がある・・人間だって同じですよね。
 みんないろいろ・・それなのに、私たちはすぐに男の人はこうあるべき、高校生はこうあるべき、雨の音はこう、風の音はこう・・そんなふうにひとつにくくることが身に付いているのかも知れません。大ちゃんはこんな詩を作りました。「あっちで地面にぶつかり こっちで雨が地面にぶつかり ぶつかる音がいっぱいだから 雨の音は心に重いなあ」それにしても大ちゃんやそれからきっとみずみずしい感受性でいろんなことを感じているだろう子どもたちにも、私は雨というものはざあざあとふるものですよ、風はそよそよ吹くものですよと押しつけてしまうのは、とてももったいないことですね。