第58回　3月8日の朝に

顔を洗ってパソコンを点ける。ブラウザを開いて、NHKのラジオ体操、今はテレビ体操「第１」の画面を出す。ネットから採って保存してあるのだ。ピアノが流れ出す。
ピチピチした女子が5人、レオタード姿で待機している。真ん中のひとりは椅子にかけている。昔はなかった高齢者向けバージョンだ。私はまだ頑張って椅子を離れ、家具がないあたりに陣取る。男子の明るい声が言う。「のびのびと背伸びの運動から」。
少なくともここ数ヶ月は続いている朝の日課だ。よくしたもので、最初、あれこれとふらついていたのが、ふらつかないコツを会得した。関節もあまり音を立てなくなった。動きながら、その日の体調の良し悪しを測る。考えるともなくいろいろ思う。

今日は月曜か、「ただいま雑記」原稿締め切り日だな。書きたいことはいろいろあるけど、ニュース解説にはならないようにしなきゃ。解説するほどの知見はないし、そういう記事はマスコミに溢れているもの。文芸人を目指す私としては、いろいろな意味で私にしか書けないものを書きたい。
テーブルの上に置かれた新聞の見出しが目に入る。〈女性不況　世界で〉〈日本深刻　家事負担と職種に偏り〉（朝日）
このごろ強く感じていたのだ。女の地位やらセクハラやらがよく問題になり、女のエライさんが増えたわりには、女一般の状況がよくないようだ。ニュースでもドラマでもCMでも、われらが若い頃に比べて、粗暴な女、ケンツクした女はよく見かけるが、ハツラツと爽やかに自分を生きる女は見かけない。女の状況は、よくない時代なのではないか、と思っていた。

それにしても最近、〈女性不況〉がよくマスコミの話題になっているな。どうしてなんだろ？
あ、そうか！　今日3月８日は「国際女性デー」だった。その関連に違いない。原爆の日がくると関連のニュースが出るのと同じだ。１９７５年、国連がこの日を決めた。起源は１９０４年、イギリスで起こった参政権を求める女たちのデモの日だ。この制定をキッカケに米国で英国で欧州で果敢な「女性解放運動」が巻き起こり、日本にも引火して、私も嬉しく巻き込まれることになったのだった。
１９８０年参院選に出ちゃったのもその勢い。婦人議員連盟の一員として、１９８５年、ナイロビで開かれた世界婦人会議にも参加した。といっても、１人１派、みなさんのご厚意で加えてもらっただけ、資金も自前だったけどね。
あのころはジェンダーなんてシャレたコトバは普及していなかった。でも世界中が「女は男と同等な人間なんだ！」という気づきに燃えていたように思う。志を共にする女友だちも、あの時代にたくさんできた。さて、深く吸って〜吐いて〜
「テレビ体操、このへんで。今日も一日元気でお過ごしください」
はい！　ん？　しかしどうして体操するのは女、指揮する声は男なんだ？

1980年代「ホーキ星」の仲間（2017年の集い）

伊豆新聞に連載中　その608　（2021年３月10日掲載）

第57回　花と人間の不思議な関係
第56回　スモモの木の下で
第55回　10年後の余震？？？
第54回　男の会議から女の会議へ
第53回　コロンボがいない国
第52回　足指自由宣言
第51回　ロウバイの日々
第50回　ワルガキ
第49回　おせっかいで団結！
第48回　木星と土星が接近すると
第47回　青空に白く光る
第46回　ガスレンジ新式？！
第45回　薬局の娘が……
第44回　転々流転の姓ながら
第43回　よろしうおたのもうします
第42回　奇っ怪！アメリカ式選挙
第41回　老いてなおハツラツ？！
第40回　どうしてる？労働者諸君！
第39回　ひさびさの博士
第38回　タレント事務所に電話してみた
第37回　コロナと３大統領
第36回　不安なゴマカシ日本語
第35回　このごろの自殺
第34回　元子役の意見
第33回　今こそラジオ体操！
第32回　爺さんは婆さんだった
第31回　LGBTQ＋！
第30回　学歴詐称
第29回　嬉し恐ろし初体験
第28回　趣味はカネ儲け？
第27回　『雨』を歌えば
第26回　ツッパルことが男の……
第25回　連日の雨に
第24回　ひしひしと不確実性の時代
第23回　野球オンチなので
第22回　トランプ的思い上がり？
第21回　ウグイスはなんと鳴く？
第20回　昔「広告屋」今アドマン
第19回　ステキなステッキ
第18回　みいんなマスク
第17回　ただいま！雑記復活！
第16回　みなさんご無事で！！！
第15回　DT方式？！
第14回　ウイルスと風俗
第13回　私の問題・社会の問題
第12回　ワラビとカンゾウ
第11回　ウイルスまくひとカネまくひと
第10回　新型コロナウイルスお目見え！
第9回　新型コロナウイルスで流行る自粛
第8回　カードの脅迫
第7回　「仮釈放」の友
第6回　子抱き地蔵
第5回　マスクが消えた？！
第4回　確率論的津波評価、なぜ？
第3回　「次世代」なるもの
第2回　道玄坂の日の丸　
第1回　新年につきごあいさつをば

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