伊東市在住、おんな組組員・伊豆半島人を名乗る中山千夏さんの、身辺四方八方雑記!
伊豆新聞のシニア・ページに、2009年から毎週一回、連載されている長寿コラムを、同新聞のご協力で、おんな組用にアレンジ。たっぷり転載していきます。
 
 
 

第53回 コロンボがいない国

友だち、知り合い、家族親族に警察官と判事はいない。それなのに、いやに親しい気がするのは彼らを主役にしたテレビドラマをたくさん見てきたからだ。
裁判官は少ないけれども、警察官は数え切れないほど知っている。長野県警の竹村警部、警視庁の杉下右京警部、捜査一課長の大岩警視正、それに警察官の不正を取り調べる監察官や各地の科捜研で働く鑑識さん、果ては経理部に勤務するサラリーマン刑事こと竹富さんまで、知り合いの多いこと多いこと。
なにしろロサンゼルス市警の警部コロンボとまで親しいのだから、我ながら呆れる。

ところで、コロンボさんと、私が知る日本の多くの警察官(むろんドラマの)とでは、目立って違うところがある。日本の多くの警察官は「犯人」によく説教をする。けれどもコロンボさんが人殺しを白状したひとに向かって、説教をする場面は見たことがない。するのは「うちのカミサン」の話ばかりだ。
また日本の警察官や判事(むろんドラマの)は、「正義」について大いに悩むことが多い。職務上、正義に反することをしなければならない時など、悩みに悩んで泣いたりする。
コロンボは違う。犯人に対しても、人間らしい感情はおおいに持っているのだが、関心はもっぱらメボシをつけた人物を「犯人」と立証すること。そのために有無を言わせぬ確かな証拠を集め、「犯人」に突きつけ、自白させること。そのふたつに全力を注ぐ。ドラマの大半の時間がそれだ。
その時、「正義」なんか眼中にない。物証と自白を得るためには、詐欺やコソ泥に近いことまでする。ただし暴力は絶対にふるわない。アメリカなのに拳銃を持たず警察の定例の射撃訓練もしないので担当からよく怒られている。
いっぽう日本の警察官たちは、詐欺やコソ泥はほとんどしないかわり、正義によってよく容疑者や犯人に乱暴する。
この違い、案外、現実にあるのではないかしらん。

先月の29日、伊豆新聞(伊東版)のトップ記事は〈干物店強殺・肥田被告の死刑確定へ・最高裁上告棄却「犯人と認定、相当」〉だった。事件は2012年の伊東市で起きた。干物店の経営者と従業員の遺体が、業務用冷凍庫の中で発見された。
伊東市民のひとりとして、衝撃を受けると同時に、逮捕、起訴され一審で有罪となった「被告」について、何ら物的証拠は無く、自白どころか否認している、というのにびっくりしたものだ。
そういう警察検察がわの判断が今年先月の最高裁でも維持された。そこにコロンボがいたら、こうはならなかった。たぶん正義観の肥大したひとたちが、このような凶悪な犯罪は、どうしても「犯人」を挙げて厳罰に処さなければ、との思いで判断した結果だろう。
しかしこの正義はマズイ。確たる物証も自白もなく、ひとを犯人と定め、しかも死刑にしていいのは神様だけだろうに。

伊豆新聞に連載中 その603 (2021年2月3日掲載)


なくそうよ死刑も原発も


第52回 足指自由宣言
第51回 ロウバイの日々
第50回 ワルガキ
第49回 おせっかいで団結!
第48回 木星と土星が接近すると
第47回 青空に白く光る
第46回 ガスレンジ新式?!
第45回 薬局の娘が……
第44回 転々流転の姓ながら
第43回 よろしうおたのもうします
第42回 奇っ怪!アメリカ式選挙
第41回 老いてなおハツラツ?
第40回 どうしてる?労働者諸君!
第39回 ひさびさの博士
第38回 タレント事務所に電話してみた
第37回 コロナと3大統領
第36回 不安なゴマカシ日本語
第35回 このごろの自殺
第34回 元子役の意見
第33回 今こそラジオ体操!
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第31回 LGBTQ+
第30回 学歴詐称
第29回 嬉し恐ろし初体験
第28回 趣味はカネ儲け?
第27回 『雨』を歌えば
第26回 ツッパルことが男の……
第25回 連日の雨に
第24回 ひしひしと不確実性の時代
第23回 野球オンチなので
第22回 トランプ的思い上がり?
第21回 ウグイスはなんと鳴く?
第20回 昔「広告屋」今アドマン
第19回 ステキなステッキ
第18回 みいんなマスク
第17回 ただいま!雑記復活!
第16回 みなさんご無事で!!!
第15回 DT方式?!
第14回 ウイルスと風俗
第13回 私の問題・社会の問題
第12回 ワラビとカンゾウ
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第10回 新型コロナウイルスお目見え!
第9回 新型コロナウイルスで流行る自粛
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第7回 「仮釈放」の友
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