伊東市在住、おんな組組員・伊豆半島人を名乗る中山千夏さんの、身辺四方八方雑記!
伊豆新聞のシニア・ページに、2009年から毎週一回、連載されている長寿コラムを、同新聞のご協力で、おんな組用にアレンジ。たっぷり転載していきます。
 
 
 

第44回 転々流転の姓ながら

暎(えい)さん。
伊東で知り合った「画家と呼ばれたくない」絵を描くひと、いや描かずにいられないひとで、いっしょに詩絵本『おいる』(16年、ハモニカブックス)を創った友人だ。
夫君が亡くなってから、東京の息子の近くに引っ越した。それでもわざわざ取り寄せて、この雑記を読んでくれている。毎回、短い感想と励ましのメールをくださる。前回「襲名族のかたたち」についてのメールには、こんな一言があった。
〈私は旧姓が輿石という重い硬いものだったので、海老原になった時は身が軽くなったみたいで、嬉しかったです。〉
なんと! 海老原だって相当珍かな姓なのに、旧姓まで珍しい。亡母がよく言っていた。「このトシになっても、テレビ見ていると、毎日のように初めて見る姓に出会うのよ」。高齢になってから、私も同じ経験をよくしている。
調べたらコシイシと読むらしい。山梨県韮崎などに多い。暎さんの実家も出は韮崎だそうな。

旧姓が輿石、嫁して海老原。私とはえらい違いだ。実は私、今は本名も芸名もペンネームも「一本槍」ですが、途中、戸籍の姓が転々と変わっているのです。
生まれた時は「前田」。父は婿養子だったので、前田は母の姓。
それから「中山」になった。たぶん2歳くらいの時。母が離婚して、中山さんと再婚。子連れでその籍に入ったためだ。もちろんこうした事情は、のちに聞いた。
私は中山さんが継父だとはツユ疑わずに育った。それだけ可愛がってもらった、ということで、今も深く感謝している。特に継父によるDV被害のニュースなど見ると、自分はなんと幸運だったか、と申し訳ない気がする。
中山姓の時代に私は子役として有名になった。16歳のころ、我が偉大な母はまた離婚、娘ともども前田姓に戻った。「中山千夏」の人生に忙しかった私は、戸籍名などどうでもよかったので、抵抗はなかった。中山さんもまた再婚して新たに中山一家を築いた。

ハタチを過ぎて自分が結婚した。母や祖母の囲いから出られるのが嬉しい、姓が変わるのが珍しく心楽しい、そのくらいの考えしかなくての結婚だった。今も嫁しては夫の籍に入る女が絶えないのは、姓が変わることへの物珍しさ、これで心機一転の期待感もあるんじゃなかろうか、と思う。ともあれ私の姓は「佐藤」になった。
7年で離婚して「前田」に戻った。1980年、通り名の中山姓で立候補、当選したのに、院内では本名しか使えない(当時)と知って慌てた。議員になったとたんに戸籍名を名乗るのは有権者への裏切りに思えた。慌てて友人の弁護士に手続きしてもらって、裁判官に事情を話したら、あっさりと改姓を認められた。
だから今、私は新たに立った中山籍の始まりにいる。続きはいないから、最後でもある。
ね、転々とした甲斐もなく、平凡この上ない姓ばかりでしょう?
別に不満はないけど。

伊豆新聞に連載中 その594(2020年11月25日掲載)


アザミおばあちゃん


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