伊東市在住、おんな組組員・伊豆半島人を名乗る中山千夏さんの、身辺四方八方雑記!
伊豆新聞のシニア・ページに、2009年から毎週一回、連載されている長寿コラムを、同新聞のご協力で、おんな組用にアレンジ。たっぷり転載していきます。
 
 
 

第29回 嬉し恐ろし初体験

梅雨、明けたのかな? それとも暴れすぎて一休み?
ヘチマの若者も嬉しそう。連日の悪天候にもめげずスクスク伸びて実が成った。もう数日で味噌汁のミにできる。ヘチマは育てるのも食べるのも、初体験。もっと成ったらタワシを作るぞ、最後はヘチマ水だ、と希望が膨らむ。
もうひとつ、とびきり嬉しい初体験は、小鳥の子育てを目近に見たこと。大きいキンモクセイの上部、ベランダに近いあたりの茂みに、ヒヨドリが出入りしだした。
どこか怪しいそぶりで。
そのうち巣らしきものが見えるようになった。連日の大雨にはらはらし、ちょっと小鳥の姿が見えないと心配していたが、野生は強い。記録的な悪天候にもめげず、やがて卵を生み、抱いていたらしい。

晴れたのでベランダに這いつくばって茂みを覗いたら、いた! 裸んぼのヒナが4羽、小さな巣いっぱいに折り重なるようにして、大きな口を開けている。私の気配を親だと思ったらしく、ひときわ大きく口を開けて、首を伸ばした。
その午後、庭でヘチマやなんかの世話をしていたら、ベランダの縁石にヒヨが来て止まった。それも2羽。それぞれ虫を咥えている。ご両親に違いない。ふたりは周囲の安全を確かめると、一羽、また一羽と巣の茂みに飛び込んだ。
野生の一家の営みを目近に見る。なんて嬉しい初体験だろう。
いつものことだけれど、晴れると世の中、陽気に感じる。このところ初期以上に感染者、死者が激増している新型コロナのパンデミックでさえ、おお、これほどの伝染病は初体験だ、と不謹慎にもワクワクする。
まったくコロナ禍では、私のような隠居の身でも、初体験をしてしまう。7月の末、我が長峰の住民会があった。例年通り伊東ふれあいセンターの一室を借りて。たまたま今期、自治会長の任にあるので、長峰から感染者を出してはならじ、と防疫を心がけた。

と言っても、マスク着用、消毒用アルコールスプレー準備、議題は会計報告とその採決のみ、1時間以内で終わる、そんなありきたりの対策。それでも賑やかな雑談でだらだらやるのが恒例の我が住民会としては、ン十年の歴史上、初の会議風景であった。
また、今月は例年通り、日本自費出版文化賞の自宅選考にかかっている。個人誌、研究評論、エッセイなどいくつかの部門があって、私は小説部門の最終選考を担当している。例年なら、各部門の選考委員が8月中に応募作を吟味し、その結論を持ち寄って一日東京で議論し、大賞や各部門賞を決定する。9月頭に開くその会が選考会のメインエベントなのだ。けれど、一室に集い口角泡をとばしての議論はいかにもアブナイ。
相談の結果、今年は取りやめ。各委員が論評をつけて推薦作のレポートを出し、あとは委員長を中心に電話ですりあわせる。本賞23年の歴史上、初めての体験だ。
嬉しくてやがて恐ろし初体験。

伊豆新聞に連載中 その579 (2020年8月5日掲載)


ヘチマの若者(畑で 8月1日)


第28回 趣味はカネ儲け?
第27回 『雨』を歌えば
第26回 ツッパルことが男の……
第25回 連日の雨に
第24回 ひしひしと不確実性の時代
第23回 野球オンチなので
第22回 トランプ的思い上がり?
第21回 ウグイスはなんと鳴く?
第20回 昔「広告屋」今アドマン
第19回 ステキなステッキ
第18回 みいんなマスク
第17回 ただいま!雑記復活!
第16回 みなさんご無事で!!!
第15回 DT方式?!
第14回 ウイルスと風俗
第13回 私の問題・社会の問題
第12回 ワラビとカンゾウ
第11回 ウイルスまくひとカネまくひと
第10回 新型コロナウイルスお目見え!
第9回 新型コロナウイルスで流行る自粛
第8回 カードの脅迫
第7回 「仮釈放」の友
第6回 子抱き地蔵
第5回 マスクが消えた?!
第4回 確率論的津波評価、なぜ?
第3回 「次世代」なるもの
第2回 道玄坂の日の丸 
第1回 新年につきごあいさつをば

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