伊東市在住、おんな組組員・伊豆半島人を名乗る中山千夏さんの、身辺四方八方雑記!
伊豆新聞のシニア・ページに、2009年から毎週一回、連載されている長寿コラムを、同新聞のご協力で、おんな組用にアレンジ。今年からたっぷり転載していきます。
 
 
 

第22回 トランプ的思い上がり?

米国だったか英国だったか、とにかく皮肉の得意な白人が作ったジョークにこんなのがあった。
「私には嫌いなものがふたつある。差別と黒人だ」
コロナ嵐まっただなかの米国で起きた警察によるアフリカ系アメリカ人の虐殺と、それによって今や世界に広がった人種差別反対の声。ああ、まだまだ解決していなかったのか、という感慨と共に、この古いジョークを思い出した次第。面白いことに、昔と違って今では、この矛盾したセリフを吐いている白人の顔が彷彿とする。それがどうしてもプレジデント・トランプなのね。

まだ大統領になって間もないころ。あるジャーナリストが彼を批判した。トランプさん、よほど悔しかったのだろう、そのジャーナリストを公の場でからかった。話し方から身振り手振りまで面白おかしく真似て。そのジャーナリストは軽い身体障碍者だったのだ。もちろん人権感覚の鋭い世界でのことだから、たちまちニュースになり、世界に広がり、私までもが、障碍を皮肉るトランプさんの映像を見ることになった。おかげでトランプさんの顔が差別者の顔として、私の頭に焼き付いたのだろう。
しかしこの程度の差別なら、私たちだれもが多少とも持っている。区別に偏見の加わったものが差別なのだから、区別の能力がある者は、簡単に差別もできるわけで。ただ、私たちの多くは、相手の気持ちを考えて差別を口にしない遠慮、または自分を磨くために差別を反省する向上心を持っている。トランプさんのようなひとは、そのどちらもが欠けているに違いない。

でも、ちょっとやそっとの遠慮や向上心では防げない差別というものがあるみたい。
自然災害や大事故や疫病や不況や戦争の被害者には誰だって同情する。機会があれば優しい言葉をかける。ところがそんな彼らに国やしかるべき団体から保障金や義援金が出るとなると、見る目は少々冷たくなる。ましてそのカネで遊んでいるなどという噂を聞くと、少なからぬひとは堂々と怒る。その個人にではなく、「遊んでカネを得ている被害者たち」への怒りをあらわにする。
最近も「難民のなかには、義援金という他人のカネで遊び暮らしているやつがいる、そんな難民は許せない」と怒って、「そんな難民」を揶揄するポスターを大々的に発表した漫画家がいた。
こうした怒りの実体は、すべて被害者差別の弱い者イジメだろう。なぜなら、誰も望んで難民になりはしない。望まないのに不当にも災難に遭い丸裸にされた。そんな彼らの誰かが、いささかインチキに「他人のカネ」を得たり使ったりしたからといって、それが大声の怒りに相当するものだろうか? 望んでなった政治家の公金横領に向けるのと変わらぬ怒りに?
もろもろの被害者よりマシな暮らしをしながら、彼らの生活ぶりを公に非難するのは、トランプ的差別意識の思い上がりというものだろう。

伊豆新聞に連載中 その572 (2020年6月17日掲載)


雑草大好き!臭いけどかわいい薬草ドクタミ(今年6月筆者写す)


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