伊東市在住、おんな組組員・伊豆半島人を名乗る中山千夏さんの、身辺四方八方雑記!
伊豆新聞のシニア・ページに、2009年から毎週一回、連載されている長寿コラムを、同新聞のご協力で、おんな組用にアレンジ。今年からたっぷり転載していきます。
 
 
 

第12回 ワラビとカンゾウ

この時期、我が家の台所には野草が並ぶ。
もうツクシは終わって、ワラビの盛りに入った。写真、左のボウルがワラビ。我が自治会地内をひとまわりすると、このくらいの量、簡単に採れる。
ここ数日で最盛期に突入するだろう。すると妹分から「一度にこんなに採らないでください! アク抜きする鍋が間に合いません!」と怒られることになる。
目にするとついつい採ってしまうのだ。採らずにおくと、一日でシダになって食べられなくなるから、もったいなくて、つい。というより、ツクシもワラビも「ハイここだよ、採って採って」と言っているような姿でいるから、つい。
前にも報告したと思いますが、ワラビのアク抜きにはツバキの葉がいい。簡単だ。ワラビと一緒に熱湯に漬けて落し蓋をして一晩ほど置くだけ。もっとも、ツバキの多い野山がごく近いから簡単なのだが。

右のボウルはカンゾウの新芽。同名で呼ばれる薬草ではなく、食べられる野草のほう。隣人に教えられて、今年、初めて食べた。近所のあちこちに群生している。薄緑の葉が重なり合う小さな株を根元から切って採る。湯がいて、酢味噌、白出汁などかけて食べる。柔らかいのにシャキシャキしている。特に香りの無いのが物足りないけど、食感はネギに負けない。味噌汁の具にもいいに違いない。
中国料理ではその花を食べる、と聞いて思い出した。群生しているあたりに夏、橙色のユリみたいな花がちらほら咲くのだ。調べてみたら、八重の花はヤブカンゾウ、一重の花はノカンゾウ。近くの土手には、確か八重のが咲いていた。丘の上のは一重だった気がする。夏になったら花を確かめるのが楽しみだ。
花は細長い蕾を採り集めて、スープの具にしたり、鶏肉などといっしょに炒めたりする。これもまた、東京や横浜の中国料理店で、何度か食べたことがあるのを思い出した。とりたてて美味だった覚えはないから、花は見るだけにしておこう。

ヤブカンゾウは中国原産で……うわあ、また思い出してしまったではないか、新型コロナウイルス。知ってから三月余り、世界的な感染は衰えず、その正体の解明も進まず、もちろん治療薬もワクチンもできていない。感染者、死者の数も各国の公式発表はアテにならない。
日本では今や医療問題であるよりも、オリンピックを開けるかどうかが、政治のでっかい問題になっている。私の考えでは、取りやめまたは一年延期が「正常な判断」だろう。関係者のみなさんにはお気の毒だが、この疫病で死んだひとも多いのだから、涙を飲むしかあるまい。がっかりする大会好きも多いだろうが仕方ない。
私は1964年東京で燃え尽きてしまったし、観戦観劇観イベントの趣味がまるでないし、オリンピックと懐具合は関係ない。ただただカンゾウの花を楽しみに待つだけよ。

伊豆新聞に連載中 その562(2020年3月25日掲載)

第11回 ウイルスまくひとカネまくひと
第10回 新型コロナウイルスお目見え!
第9回 新型コロナウイルスで流行る自粛
第8回 カードの脅迫
第7回 「仮釈放」の友
第6回 子抱き地蔵
第5回 マスクが消えた?!
第4回 確率論的津波評価、なぜ?
第3回 「次世代」なるもの
第2回 道玄坂の日の丸 
第1回 新年につきごあいさつをば

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