伊東市在住、おんな組組員・伊豆半島人を名乗る中山千夏さんの、身辺四方八方雑記!
伊豆新聞のシニア・ページに、2009年から毎週一回、連載されている長寿コラムを、同新聞のご協力で、おんな組用にアレンジ。今年からたっぷり転載していきます。
 
 
 

第9回 新型コロナウイルスで流行る自粛

続々と訃報が届いています。いやヒトではなくて、集会の。言わずもがな、新型コロナウィルス(COVID-19)への恐れからだ。
一番大きな集会は「和田誠さんを偲ぶ会」。3月3日に東京で開く予定だったが、2月27日、主催の文藝春秋社からファクシミリで中止のお知らせがきた。不参加の通知が、発起人の面々からまで来るにおよんで中止を決めたとか。そのほか友人たちの小さなライブ、コンサートなど、ニュースにならない中止の報が相次いでいる。
なかの誰かが言っていたけど、まったく芸人にとって公演中止は死活問題だ。政府とか相撲協会とか有力芸能プロとか、わずかなりとも中止の損害を補償してくれる大樹がないから。自分のギャラばかりか事前の制作費も負わなければならないケースもある。

今日も伊豆山中に住むミュージシャンの天鼓からメールが届いた。やはり3月3日、渋谷で開く予定だったライブを中止する、〈予約くださった方、楽しみにその日を待っていてくださった方、申し訳ありません。コロナウィルスは感染してもほとんどが無症状/軽症のはずですし、メンバーの誰ひとりCOVID-19に負けるようなヤワなタイプではないのですが、感染が伝われば高齢の方たちや持病のある家族や友人知人に行き着いてしまうかもしれない。それは避けたいと思いました〉。ううむ、苦渋の決断だな。

このところずっと思っているのだが、総理大臣発、国民宛の集会自粛要請ってとてもヘンだ。第一、要請している当人が、国会だの会議だの宴会だのといった大々的な集会を中止しない。それでも内閣一同いたって元気。感染者が出たとも聞かない。
自粛要請は、万が一集会で感染があった場合の、政府の責任逃れだろう。「だから政府といたしましては事前に自粛要請しております」と責任転嫁する役にしか立たない。
文春にしても天鼓たちにしても、そして早々と小中学校を休校にした伊東市にしても、総理の自粛要請がなかったら、きっと予定を実行していた。それでもダイヤモンドなんとかという豪華客船を、感染者ごと封じ込め、またなんの防疫策もないまま解放した暴挙に比べれば、感染は広がらなかったろう。誰に指図されなくとも、ひとびとはいつも健康であるべく「自」分で「粛(つつし)」んでいるものなのだから。
そこで政府がすべきことは、第一に正確な情報をひとびとに広く知らせること、加えて万全の医療制度、そして経済的な安心を保障すること。それがあればひとびとは落ち着き、自主的にCOVID-19と向き合う構えができる。
でも。一大事が起こると、大半の政治家たちは、国民の安否など考えるヒマがない。その一大事が自分の政治的立場にどう影響するか、自分が有利に立つためにこの一大事をどう利用できるか、まず考えて行動する。放射能にまみれながらマスクを奪い合う私たちは、そんな彼らの作品なのだ。

伊豆新聞に連載中 その559 (2020年3月4日掲載)


「満を持すモクレン」

第8回 カードの脅迫
第7回 「仮釈放」の友
第6回 子抱き地蔵
第5回 マスクが消えた?!
第4回 確率論的津波評価、なぜ?
第3回 「次世代」なるもの
第2回 道玄坂の日の丸 
第1回 新年につきごあいさつをば

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