たしかに、戦争を肯定する人を説得していたら千年あっても足りない。そんな時間は残されていない。いまやるべきことは、同じ志を持つ者と早く手をつなぐことだろう。そうすれば、暴走に対する包囲網は確実にできると確信した。
反戦、反暴力を言う人はとても多いが、なぜか分断されている。そこが支配する側の思う壺なのだろう。
ちなっちゃんとの話は早かった。
組織は、ヒエラルキーではなく、共に助け合う互助会とし、互助会名は「おんな組いのち」と永六輔さんが命名した。
呼びかけ文は、中山千夏。
『おんな組いのち志。
私たちは今、日本に住んでいる。
生まれた時から住んでいるものもあれば、途中から住み始めたものもある。
いずれにせよ、ここ、この日本に在る、という点で、まぎれもなく私たちはかけがえのない仲間だ。だから私たちは、今、かけがえのない仲間として、国家を超えて手をつなぐ。
私たちは、「日本国籍が無い」という理由で人々が苦しめられるのを許さない。
日本で生活するものすべてに、人間としての同等な権利と福利を要求する。
また私たちは、「日本国籍がある」という理由で人々が苦しめられるのを許さない。
国民に人殺しを強要するような法律は、人間の名においてぜったい拒否する。
そもそも私たちは、ひとつひとつのいのちを深く慈しむものだ。
だからこそ、いのちをはばみ破壊する暴力を心から恐れ憎む。
しかし私たちは、逃げまわらないと決めた。
妻や恋人や子どもへの男性の暴力を、私たちはやめさせる。国家による暴力にほかならない戦争と死刑を、私たちはやめさせる。
おんなの名にかけてやめさせる。
それが、この、つないだ手を流れる私たちの志、私たちのいのちから湧き出た志なのだ』
テーマソングは小室等。記者会見等、イベントの仕切りは永六輔。
そして、ニュース配信はフリージャーナリスト集団「アジアプレス」が担当し、ハガキ通信、インターネット、携帯メールといった世代間通信手段をミックスする新しい情報発信を開始することになった。
火がついた、とは、こういうことを言うのだろう。女たちの動きは早い。それは、紛れもなく危機感の現れだ。
以前キョンナムが、「私たちは炭鉱のカナリアよ」と言ったことがある。
確かに、私たちはカナリアかもしれない。
しかし、そう簡単に殺されるカナリアではない。
ここで、会について簡単に説明しておく。
★なぜ「おんな」なのか?
「やられたらやり返せ」「泣くな」「負けるな」「死を賭して闘え」と男たちを強制してきたのが男文化です。問題の解決に暴力を用いることが、反省されるどころか、時には称賛さえされる文化。それから抜け出さない限り、生来、筋肉の少ない者は安心して暮らせないし、戦争も絶えるわけがありません。
そのような男文化では、優しく気弱だったり、非戦平和を唱えたり、なんでも話し合いで解決しようとする男は、「女みたいだ」と揶揄され、爪弾きにされてきました。しかし、思えばその「女」とは、つまるところ「非暴力」にほかなりません。男文化の暴力に対する女文化の非暴力。その意味あいをすくい取り、私たちは「非暴力=おんな」と位置づけました。
つまり<おんな組いのち>の「おんな」とは、生き方として非暴力を選びとること、あるいはそう決意することなのです。だから男性にも、その意味で大いに「おんな」を自称していただきたいのです。私たちとともに。
★組レジについて
国籍がどうであろうが、私たちはみんな今、日本で暮らしている、日本に存在している、その事実の上に手を結び合う証として、私たちは「在日」を自称することにしました。
「在日○○人」の○○には、自分自身にしっくりくる現実の地名・民族名・国名を入れることにしました。いったい自分は何人なのか? ○○を選んでいるうちに、きっと誰もが多少とも、国や地域や民族と自身の自己認識について、いろいろなことを考えるだろうと思います。そしてその経験は、国家を超えた連帯にとって、有益なものだと思いました。
だから組員はみんな、「在日○○人」を称することにしたのです。これを組レジ(register=戸籍の略)と呼ぶことにしました。
★組作り
非暴力的な組織を目指した、やや実験的なやりかたをします。
執行部に類するものは置きません。すべての活動は、全面的に組員個人の良識と責任感を信頼するうえに成り立ちます。
組員は誰でも、<志>に沿った活動であれば、その責任において他の組員に呼びかけ、組の名を掲げて自由に活動することができます。また、当たり前のことですが、ある組員が主催する組活動に疑問を持った組員は、誰でも主催組員に疑問を呈し、意見を言い、議論することができます。
そのようにして非暴力的でしかも活発かつしなやかな組織の成長を目指します。
「女の腐った奴」と言われる男たちこそが時代を変えていく。ダメな男は「男の腐った奴」と、正しい日本語を使いましょう。
賢い男は、女と生きる。
化石男は、女を支配しようとする。
腐った男の成れの果てが、DV。
そして腐った国家の成れの果てが、死刑を執行し、軍事力を行使する国家なのだ。
だまされてはいけない。
振り向けば、隣に笑顔のキョンナム、隣に小僧の千夏。あー、毎日が戦いで楽しい!
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