36回  自民党と民主党はどこが違うか教えて!

田中優子(在日横浜人)

静岡県知事選は、民主、社民、国民新3党が推薦した川勝平太氏が当選した。私はこの当確を静岡県の家で聞いた(静岡県の家とは第22回で書いた、生活を縮小してゆくために購入した部屋のことだ)。大学と老猫のことで今は越せないが、やがては暮らすつもりなので、知事選にはことのほか関心があった。それ以上に、近世から近代の経済史を専門とする川勝平太氏とは、様々なシンポジウムや委員会でおめにかかっている。

「富国有徳」「庭園国家」という川勝平太氏の理想は、一見江戸時代をモデルにしているようだが、実は「近代国家」をいかに美しく秩序づけるか、という論である。そのために江戸時代を使っているのであって、江戸時代に関心がおありなわけではなさそうだ(別段悪いと言っているわけではない。現代人のほとんどはそうである)。そこから推測するに、地方分権に本気で取り組むというより、むしろ県行政や教育制度や地域産業を、国の礎として堅固に作り上げてゆくおつもりだろうと思う(別段悪いと言っているわけではない。知事のほとんどはそうである)。

川勝平太氏のもっとも評価できるところは、徹底した平和主義者だ、という点だ(アフガニスタンに増兵したオバマ大統領も徹底した平和主義者だが)。富士山に関する会議でご一緒した時、演習場について私が言及したところ、「自衛隊は災害出動をすることを主要な任務としている」旨を説明してくださった。演習場で軍事訓練をしていることはネット上でも確認できるが、現実はさておいて、災害出動体であってほしい、という願望の現れだったのだろう。「富国有徳」「庭園国家」は平和下でしか実現できない構想である。たとえ「新しい歴史教科書をつくる会」の賛同者であろうと、安倍晋三「美しい国づくり」プロジェクトの委員だったことがあろうと、小渕恵三や現静岡県知事の石川嘉延から信奉された人であろうと、その明るいナショナリズムで静岡県を戦争に利用するようなことだけはするはずがない、と信じている。

しかしなぜ川勝平太氏を自民党ではなく民主党が支持したのか? 自民党が支援しても、さほど不思議ではない。

次の都議会選挙が楽しみになってきた。なだれを打つように政権交代だろうか?が、鳩山由紀夫氏の友愛政経懇話会の政治資金収支報告書の個人献金は8割が虚偽で、死亡した人が多数含まれていたという。リストの中には、「献金の事実はない」と証言する人もいるらしい。背景には、母親から生前贈与された金の脱税工作があるのではないか、と耳にした。安倍晋三氏も小渕優子氏も、生前贈与の脱税の疑いがあった。

自民党と民主党、どこがどう違うんだろうか? いよいよ政権交代というところにきて、その大事な点が見えて来ない。高速道路の無料化だけ? 誰か教えて!