30回  麻生邸を開放せよ、皇居も開放せよ

田中優子(在日横浜人)

けましておめでとうございます。

去年もそう言って始めた年始の「あのすば」は、格差社会の到来を問題にした。一年たって何か対策が打たれたか。とんでもない。東京では、仕事を失った300人以上の派遣労働者が日比谷公園のテントに押しかけ、湯浅さんはついに、厚生労働省の建物を開けさせた。湯浅さん、たいへんな人だ。本を書いたり理屈を言うのは簡単だが、素早くテント村を作り、厚労省の講堂まで提供させた。こういうご時世でいちばん大事なのはスピードである。政府にもっとも足りないのはこの実行力であろう。

しかし果たして、これで厚労省の講堂利用は終わるのだろうか? 5日になったら出て行けと言う。そのあいだに、300人の仕事先が決まるわけではない。いっそのこと、そのままいたらどうだろうか。最低生活保障案が可決されるまで。あるいは、派遣規制がおこなわれるまで。

「明け渡してほしければ麻生邸を開放せよ」というのもよさそうだ。麻生さんがそれに応じたら、人情に篤いほんものの「親分」になれる。支持率は一挙に上がるだろう。チャンスだ!と誰かささやいてあげたら? 皇居も広い。江戸城のあった場所ならただの公園であるし、皇族たちの生活には影響を及ぼさない。テントではなく、仮設住宅を建てるのもいいだろう。天皇家の人気は今までになく上がるはずだ。民主党、社民党、共産党の建物は利用させないのだろうか。選挙前に最適なアピールだと思うが。

日本は広い。場所はいくらでもある。実は仕事もある。農村では、人手さえあれば収益がもっと上がる所が少なくない。補助金を多くして労働力を投入すれば、自給率を上げる仕組みを作れるのである。介護も、厳しい労働に見合ったまともな給与を支払うようにすれば、もっと多くの人たちが働ける。年金と一体化した最低生活保障とともに、それができるなら税金はもっと払ってもいい。

その前に、麻生邸を開放せよ! 皇居も開放せよ!