第1回 はじめまして

はじめまして。
組長・中山千夏氏のご縁で組友になった福本千夏です。以後お見知りおきを。

私、人からみれば、特徴的な容姿であるらしく、最近では、すれ違いざまにマスクの下から「きっしょ」などと言葉を落とされます。
「きっしょ」いなら見なきゃいいのよ。ふん(怒)
えっ。こどもの言うことだから許してあげーですか?
ちなみに今日はきれいに着飾った成人女性でしたよ。
だから「あんな人が…」っていつも以上に驚き、耳を疑ったもの。
一瞬にして周りに悟られず相手を抹殺する必殺仕事人みたいな技。「きっと、自分もされたことがあるんだろうな。コロナ禍いろいろみんな苦しいのかな」って自分のために相手の心情も図ってみる。
が、仮に傷つけられたからといって、見知らぬ弱そうな人に心無い言葉を吐くのは、あかんわー。「お恨みはらして候」の必殺仕事人も「倍返し」の半沢直樹も強い悪に立ち向かっていくから話になるわけよ。

息子に言ったとて「おかん。あーあとうとう耳まで…」と返されるのがオチ。でもあの子のそんなアクタイとニッて笑う顔が、私を一番元気にさせる?
と、玄関に目をやった瞬間、半月ぶりの息子の姿。うわー。なんだか今までにないやつれっぷりだ。中学教員になり、最近はじめた一人暮らしは、きっと不健康極まりないものなんだろう。分散登校後の詰込み授業、激暑禍の部活動…。学校からは夏休みという言葉が消えた。みんなそれぞれの「特別のしんどさを抱えた夏」なんだろうな。
冷蔵庫の中のケーキだけをかきこみ、洗濯物が入ったビニール袋をドーンとリビングに置いて姿を消す。受話器越しに友人は「子供も親が心配なんよ。でも、なにか理由付けしないと、帰ってきづらいのよ。洗濯物は照れ隠し」という。「ちゃうちゃう。うちの子ほんまにブショウやねん」と私はぼやく。が、確かにワイシャツとズボンだけだ。すこし物足りなささえ感じてしまう過保護な母。

息子あてに打った「腐った靴下は捨てなさいよ」のメールは送らずに消す。彼も私と同じ。きっと愛があふれた母から逃れたくて家を出たのだ。ただこいつは、こちらが諦めた頃に出戻るからたちがよろしくない。
長い同棲生活からのカップル解消は、コロナ禍の出来事だったけれど、キャラ立ちしすぎる私の存在も関係した?
き け な い
「洗濯物できてる?クイックルワイパーの紙ないか?」と深夜、車を走らせてくる息子には…。
「うちはクリーニング屋でもドラックストアでもないんだけど」と言いながら、栄養ドリンクも紙袋に入れる。

31歳かー。私の30代は子育てまっしぐらだった。よもやシングルマザーになるなんて、人生何が起きるか、ほんまに一寸先は闇だ。

コロナ禍、夫の13回忌の日程も決められず、もやっとした夏。
空いっぱいに広がる大きな雲に心をのせて、あんなこと・こんなこと思い出してみよっか。

実は私、めっちゃ男尊女卑でして…


母を振り回し、乗り越えていくちびちゃんの姿

 

*****
福本千夏の本

障害マストゴーオン!
イースト・プレス

結婚、子育てと平凡で幸せに暮らしていたが、夫が癌になり死別する。絶望の中、主婦業を捨て就職するが・・・。
息子をはじめ、たくさんの人たちに支えられ、葛藤し、見つけた希望は・・・!?
脳性まひ者・福本千夏が挑む、革命的エッセイ! 

『千夏ちゃんが行く』
飛鳥新社

福本千夏さんの初めての本。
処女作とは思えないクオリティに編集さんが驚いたとか。
泣いて、笑って、恋をして。
一途、前向きに突っ走る!
清冽な生き方が胸を打つ、なにわのオカン、再生の物語。


 

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