サコ サコで〜す。
チナ チナで〜す。あわせて、
二人 サコチナで〜す、ヨロシおたのもうしまぁす!(笑)
チナ という調子でやってきたこの連載も、はや14年。
サコ はい、14回目の年越しを迎えております。
チナ そこで恒例の特別企画なんですが、今回は、サコちゃんの学究人生について、じっくりうかがいたい。
サコ えっ? ななな、なんでまた…
チナ いや、たぶんアナタが30才前後、私が40才前後からのながあい付き合いになるんだけど、考えてみたら今まで一度もちゃんと聞いたことないのよね、そのへん。女性考古学者は希少だと聞いてます。思えば考古学者になりたい、という女は見たことない。実際にやってる女も私はサコちゃんしか知らない。
サコ ふむふむ。
チナ おんな組としては、せっかくサコちゃんがいるんだから、そこを突っ込んでおかないとアカンやろ、と気がついたわけよ。だからよろしくお願いします。
サコ あ、そっか。千夏さんは昨年末に、なぜ国会議員になったのかから始まり、今日までの『活動報告』を出版しましたね。千夏さんが国会議員になる前から今日に至るまで、差別のない社会をめざす千夏さんがどういう心づもりで何をしてきたのかが、よぉ〜くわかりました。同時に、私は千夏さんのこと、知らないことだらけだった、ということも、よぉ〜くわかりました。だから、今度は私の番なんですね。
チナ そうそう、そんなとこ。では早速! 今回は私、インタビュアーに徹するからね!
サコ たは〜(;´∀`)

――まず、今、この国の女性考古学者について、その現状を聞かせてください。
サコ えと、まずガクシャって言われると、お尻がむずむずするので、考古学研究者って呼び名でお願いします。
――了解です、が、むずむずするのは「学者」だと偉そうだからですか?
サコ はい。それに、日本の考古学界の事情もあります。
――というと?
サコ 学者というと、大学や研究施設にいて、学術研究を専業とする人っていうイメージですよね。ところが日本では、そういう人達以外にも、全国の自治体の教育委員会や埋蔵文化財センターなど、行政職員(及びそれに準じる身分)として、遺跡の発掘調査や保存・活用に取り組む人達がいて、行政内研究者とか埋蔵文化財専門職員などと呼ばれます。文化庁の統計によると、埋蔵文化財専門職員は、バブル期の頃は開発事業にともなう発掘件数も多くて約7000人いましたが、現在は5666人(平成28年)。一方、大学・研究機関に所属する考古学者の数は、統計がないのでわかりませんが、行政内研究者の10分の1もいるのかなぁというくらい、圧倒的に行政内研究者の方が多いです。最近は、民間の発掘会社やそれに類する組織の発掘調査員という人達も出てきましたが。
――行政職員でも研究活動はできるんですか?
サコ 行政にいると、どんな時代のどんな遺跡でも発掘調査しなければいけないから、勉強しておかないと務まらないですね。でも、勉強は、ほとんど個人的な努力でやっています。それでも、研究のレベルは、大学の考古学教員と遜色ない人達もいます。行政がおこなう発掘調査は開発事業にともなうもので、毎年約8000件にも達します。それに対して学術調査は数百件ほど。だから、研究のために使うデータの大半は、行政の発掘成果によるものです。大学の研究者と行政内研究者は、仕事内容や役割が違うのであって、どっちがエライとかじゃないですね。だから、どっちも「研究者」。

――なるほど。その行政の文化財担当職員に女性はいますか?
サコ いますよ。珍しくないくらい、います。といっても、絶対数は少ないです。
「日本考古学協会」は、わが国最大の考古学の学会で、会員数は約4200人。その名簿で、女性会員を数えてみました。名前で性別の判断がしにくい人も女性とみなしたから、実際よりも多いかもしれませんが、それでも304名、約7%です。大半は行政内研究者で、大学に所属している人は大学院生を含めて46名で約15%。もちろん、協会に所属していない女性研究者は多いはずです。既婚女性は遠方で開催される学会には出にくいし、同業者同士の夫婦だと、会費が大変だから夫だけが入会していたりしますから。
 女性の割合が7%というのは、女性管理職・衆議院の女性議員の割合と同じです。参議院もあわせると9.3%と少し増えますが、世界平均23.3%に遠く及ばず、世界193ケ国の中で163位(2017年3月)だそうです。
――日本の女性の進出は全般的に世界のなかで遅れていますが、この分野でも遅れは歴然、ということですね。国内での他の学界と考古学界、比較すると、どうなんでしょう。
サコ 日本の学界全体での女性研究者の割合は約20%らしいので、やはり考古学界は少ないんですね。ただ、この20%というのもEUと主要10ケ国のなかで最低で、日本に次いで下から2番目のメキシコとチリは38%もあります。

――海外の考古学界は?
サコ かつて、イギリス人考古学者のご夫婦が来日されて、関西の考古学研究者が200人くらい集まって歓迎会を開いたんです。ほとんどが男性で、女性は数えるほどでした。奥様も考古学者なのですが、その奥様が私に小声で「なんで、こんなに男性ばかりなの?」って不思議そうに尋ねられました。BSでよく海外の発掘調査の様子が放映されますが、かなりの割合で女性の考古学者が登場しています。
 日本の考古学研究者は、発掘はもちろん測量や写真撮影など、何でも自分でできなきゃ一人前じゃないという職人カタギ的なところがありますが、ヨーロッパでは、そんなふうに発掘現場で汗水流すのは技術系の人達であって、研究者はその成果を研究・分析するデスクワークが中心なのだそうです。だから、女性の考古学者が多いのかもしれませんね。ある日本の著名な考古学者が若い頃、海外の発掘現場で時間がないから自分で測量や写真撮影などもしていたら、「お前は本当に考古学者なのか」と怪訝な顔をされたそうです。
 ま、とはいえ、現場での仕事も女性にできないほどの重労働ではないし、むしろ細かい作業が多いから女性向きかもしれませんよ。あ、そうそう。出土品を洗ったり、接合したり、実測図をかいたりする整理作業は、100%といっていいほど、女性がやっています。
――それは女性研究者…ではないですよね?
サコ はい、ほとんどがご近所の主婦などのアルバイトです。
 出土品の整理作業は、いわば専門技術職ですから、考古学の学術的な知識よりも、経験がモノを言います。土器の接合や復元は、大学出たての専門調査員よりも、熟練のおばちゃん達の方が断然上手です。
――なるほどねえ、技能はあるのに地位はバイト。これも日本中どこにも共通する女性の仕事の現状ですね。 

チナ ふむふむ、だいぶ状況がわかってきた。
サコ そうですか、よかった。
チナ でいよいよ、サコちゃんがなぜ考古学を目指すようになったのか、を究明したいのですが、それは次回にじっくりと。

サコ はい、がんばりまっす!

(次回に続く)