第287回 日本はまさにサムライ国家

中山千夏(在日伊豆半島人)

ほんと、かっこいいね! ニューヨーク声明!
地方自治がしっかりしてるというのは、いいことだなあ。

それと、南北戦争で北軍が勝って今の合州国ができたという歴史を、まざまざと思い浮かべさせる声明よね。
全体が白人の移民が作った国家でしょ、アメリカ合州国は。
でもって、乱暴に言えば、自由の女神を誇り奴隷がなくてもやっていける北と、闘争的な開拓魂を誇り奴隷なしには零落する南が衝突した。それが南北戦争でしょ。

南部の差別意識は『風と共に去りぬ』を読むと、いやというほどわかる。
話は非常に面白いし、また、差別意識についてわかる、という点でも、一読の価値おおいにあり、なんだけど。
黒人奴隷に対して罪悪感がまるで無い。自分の奴隷に対する優しさや思いやりはあっても、彼らは劣っている、だから白人が指導して労働させ保護してやらなければ、という思い込みはまるで揺らがない。
登場人物すべてがそれだということは、作者もそれだということで。マーガレット・ミッチェル(1900〜1949年)は私が1歳になったばかりの年に50歳を目前にして亡くなっている。南北戦争(1861〜1865年)の時には生まれてさえいなかった。それなのに、奴隷差別魂はしっかり持っていたわけよ。
結局、南部は、負けて悔しい花いちもんめ、ばかりで、人権無視の自分たちの誤りは、あまり反省しなかったみたい。子孫が『風と共に去りぬ』なんだものね。

アメリカみたい、とか、アメリカ人らしい、とか私たちは簡単に言うけれど、アメリカといっても全州が同じ歴史を保っているわけじゃない。ひとの来歴も違う。
トランプさんは、ドイツ人のお祖父さんが16歳の時、故郷を家出してアメリカに移民して成功した、その孫。
かっこいいクオモ知事は、イタリア系移民の子孫。人口が多くて、移民と多民族とからなるクイーンズ地区に生まれ育った。頭角を表したのは父の代かららしく、共和党に寄り、いろいろ活動(怪しげなタレント活動もあり(^_^;))した挙句に、ニューヨーク知事になっている。今の知事はその息子くんというわけ。
彼の故郷である多民族地域クイーンズ地区の歴史が、人権の面でいい働きをしている、それがこの声明に現れている、ということでしょうね。

ウチはどうなんだろ、日本国は。
さしずめ、明治維新ですかね、南北戦争に当たるのは。鎖国か開国か、ですか。天皇制か幕藩体制か、ですか。そう考えてみると、これはオサムライさんたちだけの歴史であって、「われわれ」の歴史ではないという気がします。
アメリカ南北戦争の場合は、奴隷という「われわれ」の問題が大きかった。だからでしょう、南軍北軍、共和党民主党、意見は違っても、どちらも「われわれ」の問題として、政治をした、している。
ところが日本では、勝ち組は尊皇攘夷の驕りを子孫に残し、負け組は藩の没落を悔しがる思いを子孫に残し、いずれにしてもオサムライの問題として、「われわれ」不在の政治をした、している。そんな感じがして仕方ありません。
そして、太平洋戦争のあとは、負けて悔しい花いちもんめ、ばかりで反省はないオサムライさんの精神が子孫に伝わり、「われわれ」のほうは、勝ったわけではないのに「われわれ」主義の憲法を頂いてしまったので、ぼうっとして過ごし、そうするうちにオサムライさんの歯ぎしりが原発や自衛隊の軍隊化となって炸裂するようになった、とそんな感じがしきりです。

そもそもアメリカは、天皇ナシ、王様ナシの国だったから、「われわれ」主義になれたんでしょうかね。日本国は、いまだに天皇を持っていますものね。

そう言えば、最近また神武実在説を言い出している知識人が目立つとか。
ううううむ、考古学徒(サコちゃん)と考古遊徒(私)としては、これはひとつ、科学的にケジメをつけておかんとイカンですな! ずるずると尊王に戻るのはイヤですよ。
おりしも師走。もう新年が迫っている。
うん、新年特別企画は、神武を巡るサコチナ漫談でいきましょう!
 
それではサコちゃん、みなさん、残りの2016年、どうかすこやかにお過ごしくださいねっ!