第286回 排他主義は国を亡ぼす

佐古和枝(在日山陰人)

トランプさんが勝ちましたね。「トランプしようがマージャンしようが、わたしはわたし」と呟く千夏さん。「そーだそーだ!」と思うサコですが、「そのうち日本にも、日本版トランプが出てくるぞ」と言われると、そうかもしれぬと暗澹たる境地です。
移民や外国人を排斥することが “愛国者” であるかのように言い、「(愛国者たる)自分達さえよければいい」とする風潮が、世界各地で噴き出しています。もともと多様な人々が移住して建国したはずのアメリカも、そこまで重篤なのかとショックでした。
でも、「さすがアメリカ!」と快哉の叫びをあげたのは、トランプ勝利決定の直後(現地時間11月12日)にニューヨーク州クオモ知事がFBで緊急発表した声明文でした。あまりにカッコイイので、全文転載します。https://logl.net/419

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わがニューヨーク州には、
この国の先進性の源であり続けてきた誇るべき伝統があります。
今日ほど、そのことが重要な意味をもつ時はありません。
ニューヨーカーであるわれわれの哲学は、運動のなかで
ドナルド・トランプが唱えたものとは根本的に異なります。

ですからハッキリと述べておきます。是非知っておいてください。
あなたが攻撃されていると感じたら、「自由の女神」を戴く港をもつ
わがニューヨーク州があなたを保護するということを。

あなたがゲイであるかストレートであるか、
イスラム教徒であるかキリスト教徒であるか、
富める者か貧しい者であるか
黒人か白人かあるいは褐色系かにかかわらず
わがニューヨーク州は、あらゆる人を尊重し受け入れます。

これは、われわれの信じること、
われわれが何者であるかの核をなすことです。
また、ただ言葉でそう主張しているわけではありません。
わが州法にその精神を反映しています。
国家に何が起ころうと、われわれはそうし続けます。

移民を迫害する連邦政府がわが州で同様のことを行うことは許しません。

われわれは、移民の州です。
最低賃金を15ドルに押し上げた州です。
家族休暇制を導入した州です。
あらゆる平等な結婚を認めた州です。

われわれは、ニューヨークです。
あなた方のために立ち向かいます。
そのためには けっして妥協をしません。
ご安心ください。

 

ああ、カッコイイ!こういう人達がいるアメリカという国であれば、尊敬もし、憧れもしますね。

古代中国の唐王朝は、唐の文化さえ習得していれば、出身民族に関わらず門戸を開いていました。遣唐使として渡唐した阿倍仲麻呂も科挙に合格して官僚となり、ずいぶん出世しました。また、わが日本国も、弥生時代から7世紀末まで、途切れることなく大陸からの渡来移住者を受け入れてきました。とくに7世紀後葉に滅亡した百済からの亡命者は、何百人、何千人という単位で、やってきました。日本という国は、そういう国際性豊かな空気のなかで、渡来者たちも一緒になって、つくられた国なのでした。唐も日本国も、自分達とは異なる他者と共に生きる懐の深さと知恵が、国の底力を高め、奥行きを与えたと思います。

「自分達」に固執して他者を排除することは、自分を支えてくれたり助けてくれる(かもしれない)人を減らしていることでもある。そうしてだんだん孤立して、結局「自分」をひ弱い存在に落としめていく。国も同じですよね。異質なもの達が、ゆるゆると共生していることが、そのコミュニティー、その国の足腰の強さになる。そう思います。
 われらの大先輩、永六輔さんのお別れ会の時にいただいた記念品に書かれていた言葉を思い出します。

  生きているということは、誰かに借りをつくること
      生きていくということは、その借りを返してゆくこと

 

そうやって、借りたり返したりすることによって、人と人が繋がっていることこそが大事なのだと、トランプ騒動から改めてこの言葉の意味を深く思い至すサコでありました。