第276回
新春特別企画 サコチナの土器鑑賞会 これであなたも土器メキキ!
最終回 古墳時代 後編

在日伊豆半島人=中山千夏
在日山陰人=佐古和枝

チナ サコチナの土器鑑賞会、いよいよ最終回です。サコせんせ、よろしくお願いします。
サコ はい! 古墳時代の土器のメキキポイントですね。ええっと、土師器については前回の話でいいでしょう?
チナ 一見、弥生後期の土器のようだけれど、肌が薄くて、表面がハケメ調整で、底が丸い壺は、土師器かもしれないな、と考える・・・でいいっすか?
サコ はい、おおむねそんなところです。
チナ では、須恵器のほうをお願いします。

≪須恵器の目キキ≫

サコ はい、古墳時代の須恵器の目キキは、わりと簡単です。ポイントは、「最初は丁寧に作っているが、だんだん手抜きになる!」です。
チナ あははは。
サコ 仕上げが雑になり、形が退化していきます。では、写真で見ていきましょう。まずは、いちばん基本になる蓋杯。
チナ フタつきのサカズキですか?
サコ サカズキというより、お茶碗ですね。須恵器の出現によって、このような一人用の食器が広く普及します。蓋と杯を上下に分けて表示しますね。
チナ なんかフタは無駄なような。
サコ うっ、そんなふうに思ったことなかったなぁ。そういえば、蓋の頂部はきれいにケズるので、ひっくり返してお皿代わりに使ったのかも、ですね。新説だ!(笑)

サコ Tが5世紀。Uは6世紀、Vが6世紀後葉から7世紀前半です。
チナ あ、だんだん形が単純になる。
サコ でしょ。蓋の目キキのポイントは、でっぱり(○印)がだんだんなくなって、ツルンとしたものになります。杯は、立ち上がり(○印)のところです。これが、だんだん短くなり、内傾していきます。蓋も杯も、仕上げのケズリがだんだん雑になっていき、7世紀後半になるとほとんど仕上げのケズリをしてないような雑なものになります。
チナ へええ。丁寧に作る暇がないほど流行ったのかな。
サコ 大量生産にむかっていくのでしょうね。大きさにも変化があって、Tは直径が10〜12cm、Uは少し大きくなって14〜15p、Vはまた小さくなって10cm内外です。
チナ 小→大→小が全体的な時代傾向なのね?
サコ はい。蓋杯の他に、これはハソウという器なんですが。
チナ およよ、なんです、これ? 胴に穴が開いている。
サコ 変でしょ。穴に竹をつっこんで、なかの液体を吸ったり注いだりしたと考えられています。ハソウという字(瓦+泉)は、平安時代の『延喜式』にみえる、竹で口をつくるという器の名称からとったのですが、須恵器のハソウは8世紀の初め頃に消滅していますから、平安貴族達がいうハソウと同じかどうか、怪しいですね。
それに、液体を注ぐなら、なんで最初から吸い(注ぎ)口を作らなかったのか、不思議ですよね。穴を木片で塞いだ状態で出土した例もあるので、開けたり塞いだりしながら使ったのかな。水銀朱を研究している松田壽男さんは、内部に朱砂が残っているものがあるので、水銀を蒸留する器ではないかと説をだしています(『古代の朱』)。でも、そうだと確認できる事例が少なすぎる。よくわからない須恵器です。

サコ ハソウの場合、時代と共に首が長くなっていきます。
チナ おお、ぐんと背伸びしますな。
サコ 高坏も背伸びしますね、脚部がだんだん長くなっていきます。

サコ 次の提瓶や平瓶は6世紀のものです。提瓶はぶらさげるための把手がだんだん退化していきます。ってことは、この把手はあまり必要ではなかったようですね。

サコ 須恵器は、水甕のように日常容器としても使われただろうものもありますが、多くは古墳から出土し、お供え用または古墳祭祀で用いられたものです。だから、時代とともにだんだん頸部や脚部が必要以上に長くなったり、本来は必要だったはずの把手が省略されたりしていきます。なかには、小型の土器や人像・動物像などを付けて飾ったものもあり、装飾須恵器と呼ばれています。

チナ 驚くべきデザインのがありますね〜。しかし、器の成形にくらべて、像がやたら素朴ですけど。
サコ あはは。須恵器作りの職人さん達は、お人形作りは手を抜いたのかな。
チナ そそそそんなあ(笑)
サコ 7世紀中頃になると、蓋にツマミがついて、杯には高台がつくという新しい蓋杯が出現します。ハソウや提瓶など古墳時代以来の器種は無くなって、平瓶や長頸壺、盤皿類など新しい器種が登場します。
チナ ほう、はっきりした傾向があるのね。
サコ ええ。これらは、仏教の普及にともなって、仏具を模倣したものと考えられています。

サコ 7世紀になると、遣隋使や遣唐使が派遣されて新たな大陸文化が摂取されたり、仏教が広まるなどして、この国の空気が大きく変わります。須恵器も7世紀中頃から、つまみ付きの蓋杯の他にも新しい器種がいろいろ登場し、古墳時代的な器種が次第に消えていきます。
新しく登場する須恵器のひとつ、平瓶は「酒瓶」だといわれていますが、この形、私たちが知っている何かとそっくりではありませんか?(;^ω^) 

チナ ん? あ、あれだ!
サコ 中国に、これとよく似た「虎子」と呼ばれる焼き物があります。「虎子」とは尿瓶の意味です。形は似ているのに、酒瓶と尿瓶、えらい違いです。平瓶、ほんとは何に使ったのでしょうね(汗)

サコ というわけで、縄文土器、弥生土器、古墳時代の土師器・須恵器と、時代をおって土器をみてきました。サコの守備範囲は、ここまでです。少しは目キキのお役に立ったでしょうか?
チナ いやはや、メキキとまではいかないけど、これから展示を見る時、一段と楽しくなるのは間違いないと思いますよ。
サコ そうですよ、博物館に行った時、「あ、これはアレだ」など、少しでも自分でわかると嬉しく楽しいものです。ぜひ、博物館に行って試してみてください。
チナ ガッコのセンセでも忙しいのに、丁寧に教えてくださって、ありがとうございました。
サコ とんでもないです。私も、久しぶりにいろんな時代の土器の勉強をしなおして、面白かったです。といっても、泥縄のベンキョーだったので、あまり出来のよい解説ではありませんが、お許しを。

チナ ところで、最終回にふさわしい質問をひとつ。長い付き合いになるけど、改まって聞いたことない話。オンナノコがなんでまた考古学にいったのか? (できれば手短かに(;´・ω・) 教えてくださいな?
サコ うっ・・・それ、学生にも、よく聞かれるんです。まるで、珍獣を見るみたいな顔つきでね(笑)。大学2年生まで、考古学なんてサッパリ興味なかったんですよ。授業さぼってばかりのスボラ学生だったし。それが、いまから思えば奇跡的な偶然というか、私の本意ではなかったのに森浩一という考古学の大先生に電話が繋がってしまったことに始まり、そこからまた変な先輩に遭遇して・・・ああ、手短かには説明しきれないので、またいずれ回を改めてツッコんでください(笑)
チナ はい、そうしましょ。

サコ なにはともあれ、たかが土器、されど土器。土器の形や文様、またその変化にも、いろんな人間社会の動きや価値観が投影されています。黙して語らぬ土器ですが、あの手この手のラブコールを送り続けると、けっこういろんなことを教えてくれるんですよね。 
土器の目キキはその第一歩。いきなり全部をマスターするのは大変なので、まずは縄文土器とか須恵器とか、気に入った土器に狙いを定めて、チャレンジしてみてください。ふぁいと〜!!
チナ おおおおう!

(次回からは従来の往復書簡で当コラムは続きます)