第270回 「宇宙芸術と古代」って?!

佐古和枝(在日山陰人)

千夏さま あさぎり町ではお世話になりましたぁ〜。あさぎり町と本目遺跡、クマソのことは、このコラムの第86回と第252回で書きました。旧免田町の頃は、「クマソ復権」と本目遺跡の発掘調査で盛り上がっていたのですが、町村合併してあさぎり町になってからはイマイチ。それで、千夏さんに檄を飛ばしてもらおうと、講演をお願いしたのでした。
「女性と、後進国と、小さな自治体は似ている」という、千夏さんならではのまちづくりの切り口は、とても新鮮でした。そして締め括りで、クマソタケルの登場(^O^)/ たしかにクマソタケルは、地方創成のシンボル的存在ですね。球磨のヒーローは、クマモンよりもクマソタケルでいきましょう!

ところで、鹿児島空港で千夏さん達と別れた後、サコは種子島へ。鹿児島県で開催された国民文化祭の一環として南種子町が企画した「黒潮が育んだ古代文化と宇宙芸術」のシンポジウムのパネリストとして招かれたのでした。
南種子町は、ロケット発射場のある町で、その打ち上げ場のすぐそばに、国史跡の広田遺跡があります。それで、JAXA(宇宙航空研究開発機構)と一緒に「宇宙と考古学」というワークショップや講演会を何度かやりました。そのことは、第154回のコラムで書きました。

「宇宙と考古学」は、繋がっています。考古学は人類史でしょ。人類の登場は、生命の誕生から始まる地球の生き物の歴史の延長です。そして生命の誕生は、地球の誕生に繋がって、そこから宇宙の話に展開する、ってことで、ひとつの壮大な物語ができるんです。
また、「考古学と芸術」は、じつは最近流行の取り組みで、あちこちの遺跡でアーティストと考古学のコラボが試みられています。はるか昔の出土品が、アーティストの手にかかると、時間の隔たりやアカデミズムの壁を吹き飛ばし、ストンと現代に溶け込んで見えてくる。芸術の力って、すごいなぁと思います。

しかし、今回は「宇宙芸術」。最初、その言葉を聞いた時には、宇宙のさまざまな美しい光景や現象を、芸術家が作品に仕上げるのかなと思ったのですが、ネットでググってみると、そんな単純な話ではなさそうで。。。

宇宙芸術の定義(beyond [space + art + design]のHPから)
1.宇宙に於ける時空間の概念から、新たな世界観や美意識を創造する。
2.芸術、科学、工学の融合をとおして「宇宙、地球、生命」の在り方を問い続ける。
3.以上を実現する為の宇宙観念と宇宙活動に関する広範な芸術領域

なんのこっちゃ?? ゲージュツ的素養が皆無の考古徒サコは、ただただ途方に暮れるばかり(@_@;) それでも、「とにかく来い」と言うので、行きました。

現地では、今春オープンしたばかりの広田遺跡ミュージアムのまわりに、子ども達が作った奇想天外な「宇宙かかし」がズラリと並んでいました。遺跡にむかう田んぼのなかに、UFOみたいな奇妙な木造建築物を発見! 中に入ると、壁板に組み込まれたトンボ玉を通して太陽光線が真っ暗闇のなかで色とりどりに輝いて、その光の変化で太陽の動きが体感できるのでした。夜には海蝕洞窟のなかでプラネタリウムの上映があり、波の音を聞きながら宇宙にいるような気分を味わいました。そんなこんなで、町のあちこちで何人ものアーティスト達がそれぞれの発想と技で宇宙を体験させてくれていました。なんだかワケがわからないけど、楽しかった(;^ω^)
宇宙という気が遠くなるほど遠い世界を、ストンと身近に感じさせてくれている。それが「宇宙芸術」なんですね。だったら、「考古学&芸術」と同じだ。そして、「宇宙―地球の誕生―生命の誕生―人類の誕生―現代」という、宇宙と現代を繋ぐタイムスケールのなかに、考古学も含まれているわけだ。

〜と、勝手に納得して、いざシンポジウム会場へ。私以外のパネリストは、いつもみごとに私と話を合わせてくれるJAXAの大塚成志さん、「種子島宇宙芸術祭」仕掛け人のアーティスト森脇裕之氏、文化政策の中川幾郎先生、そしてコーディネーターは写真家で多摩美術大学教授の港千尋先生。凄い組み合わせでしょ、ははは(汗)。でも、サコはともかく、みなさんのお話は迫力あって、お互いの連携もバッチリ。おもしろいシンポジウムだったと思います。

JAXAの大塚さんの話で印象に残ったのは、「地球を理解しようと思ったら、地球を外からの視点が必要なのだ」という指摘。そうか!同様に、現代社会を理解するために、現代社会の常識や価値観、諸々の枠組みの外側にわれわれを連れてってくれるのが考古学であり、芸術なのだ。宇宙、芸術、考古学・・・ともすれば「お金の無駄使い!」ってな批判を受けやすいと思うけど(;^ω^) そうじゃなくて、地球・現代に生きるわれわれにとって、共通する大切な意義をもっているということですよね。似た者同士、これからも一緒にオモロイことやれるといいな。
南種子町では、2017年の「種子島宇宙芸術祭」の開催にむけて、2012年から「こども宇宙芸術教室」を中心に、毎年さまざまなプレ・イベントが開催されています。来年も、楽しみです。http://www.town.minamitane.kagoshima.jp/spaceart.html#01


宇宙かかし


広田遺跡ミュージアム