第254回 ヨソ者の役目

佐古和枝(在日山陰人)

わ〜い、あさぎり町のこと、千夏さんにも気に入っていただけそうで、嬉しいです。クマソについては、第86回(2008年3月)に書いていますので、気になる方は見てください。

「よくよく意識していないと、自分では客観的なつもりでも、ゆがんじゃう」そうですね。いつもそういう意識をもっていないと、知らぬまにアブナイ方向に突き進んでしまう。
われらが友人オオタスセリさんの大ヒット曲「ストーカーと呼ばないで」を思い出しました。「ストーカーって呼ばないで、ただあなたが好きなだけ〜♪」何度聴いても笑ってしまう。けど、実は笑えない。笑えない話なのに、笑ってしまう。スセリさんの芸ですね。

客観性って、難しいですよね。自分の見方・考え方が客観的かどうかは、自分だけではわからない。ストーカーだって、「自分は悪くない」と思っているのですもんね(^-^; だから、「自分は大丈夫かな」と常に疑って、他人の意見や自分と違う意見も聞いて、確かめる。邪馬台国論争でも、反対側の主張もちゃんと理解しておかないとイケマセン。そうして、まわりの人達にナルホド〜と思わせる実証的な裏づけを、どれだけ用意できるか。そこがキモですね。もっとも、学問は多数決ではありません。ダーウィンやコペルニクスのように、ずーっと後の時代にやっと正しいと認められることも少なくない。いずれにしても、評価は他人がするものだと思って、耳と脳みそをオープンにしておくことが、自家中毒にならない予防策かな。

いわゆる「外部評価」ってやつです。遺跡の保存活用や「クマソ復権」のように、地域の文化資源の価値を伝えようとか見直そうとする時に、いちばん伝わりにくいのが、実は地元の住民です。身近にありすぎて、その値打ちがピンとこない。貴重なものは中央にあるもので、こんな田舎にあるのはつまらないものだ、と思っている人が多いんですね。考古学に限らず、地方へ行くと「うちの町には何もなくて・・・」という人がよくいますよね。ヨソ者からすれば、こんなに素敵な景色、美味しい食べ物、豊かな伝統があるのに、って。


天子の水公園花菖蒲(写真提供:あさぎり町)

だから、そういう時に「すご〜い!」と言って地元の人達を覚醒させるのが、ヨソ者の役目。妻木晩田遺跡の保存運動でも、そうでした。地元では頻繁に報道されているのに、ほとんど関心がもたれていない。まさかわが町にそんな凄い遺跡があるなんて思いもしない。そこに、毎月ヨソから考古学のセンセイや研究者が入れ替わり立ち替わり講演会にきて「妻木晩田遺跡は凄い遺跡なんです」と、きちんと説明してくださったことで、地元の空気が変わりました。
センセイ達の話を直接聞いていない人達も、「考古学のセンセイ達が、入れ替わり立ち替わり、遠くからやってきて、貴重な遺跡だというのだから、貴重な遺跡なのだろう」って、だんだん関心をもってくれるようになりました。同じようなことを、地元のサコが言ってもダメなんです(^-^; 
最近、日本に来た外国人観光客が好んで買う日本製品とか外国で高く評価されている日本製品を特集するテレビ番組が増えていますね。よく知られているマッサージ機、温水洗浄便座の他、ハンコ、蛍光マーカー、筆ペン、爪切り、弁当箱、消しゴムなど、私達が当たり前に使っているものが、外国人にこれほど称賛されているっていうことで、日本の技術やアイデア、気配りの素晴らしさがわかる。それと同じです。


白髪岳雲海(写真提供:あさぎり町)

まちづくりに必要な人材は、「若者、馬鹿者、ヨソ者」と、よく言われます。若者=夢を抱く人、馬鹿者=夢中になる人、ヨソ者=外部評価する人、です。もう20年も前から言われており、いろんな人に使われまくって、もう誰が言い始めたかもよくわからなくなっているそうです。それほど、みなが認めたセオリーだということなのでしょう。

 なので、千夏さんは「ヨソ者」の立場から遠慮なく、「クマソ、大好き〜!」と言い、現地でイイコトみつけたら遠慮なく「あさぎり、サイコー!」と言い、地元に夢と元気を与えてください!(^^)! 歴史的な実証性に関しては、一応ケンキューシャのハシクレであるサコが、後ろに控えておりまする。ってことで、よろしくお願いしま〜す!(^^)!


布水の滝(写真提供:あさぎり町)