第252回 「球磨のしあわせ小宇宙」あさぎり町へ、ようこそ!

佐古和枝(在日山陰人)

お〜〜〜待たせしました!ってか、コラムの原稿、すっかり忘れてましたぁ〜(◎_◎;) このコラム始まって以来の大失態。いつかやるんじゃないかと思っていましたが、とうとうやってもた(-“-) 原稿が遅れた穴埋めに、幸せのおすそ分けをします。
 
2月下旬、熊本県球磨郡あさぎり町に行ってきました。20年前にこの町で、大学生達を引き連れて、弥生時代の墓地・本目(もとめ)遺跡の発掘調査をしました。調査は春休みと夏休みを使って2年間、1年の4分の1以上をこの町で過ごしたことになります。その間、ほんとうに多くの町の人たちに熱烈歓待していただいたので、いまだに私にとって「ただいま〜!」と帰っていく第2の故郷の町なのです。今回の訪問は、今年8月におこなう本目遺跡発掘20周年記念イベントの打ち合わせでした。

九州山地のなかにポッカリ開けた人吉盆地。関西からだと鹿児島空港から入るのが最短コースなのですが、今回は久しぶりに熊本からJRで行きました。球磨川沿いの景観を楽しみながら、だんだん山奥に入っていく感は、ヒコーキにはない楽しさがあります。


特急「くまがわ」と特急「くまがわ」の乗務員のおねえさん

人吉駅からあさぎり町までは、いま注目の第3セクター「くまがわ鉄道」で約25分。前に乗ったのは、木造の車内に地元の植物図鑑などを並べた本棚と植物の額が飾られていて図書館&美術館みたいになっているKUMA1でした。今回は大人気の観光列車「田園シンフォニー」号に初乗車! 人吉球磨産のヒノキ造りの車内はヨーロピアンな内装で、小さなバー・カウンターや地元の特産品のショーケースがあり、BGMはクラシック音楽。景色のいいところではスピードを落としてゆっくり走ってくれるし、途中の駅舎で幼稚園児たちが手を振ってくれたりなど、旅人へのもてなしの心が嬉しいです。季節によって「観月列車」、「クリスマス・トレイン」、「カフェ・トレイン」とか「漫画キャラ仮装列車」、「婚活パーティー列車」など、楽しい企画がいっぱいです。


KUMA1号 外観と内装


田園シンフォニー号 外観と内装

広い車窓に広がる球磨の田園風景は、美しい。昨年、全国各地のまちづくりの指南役、文化政策の中川幾郎先生をお連れした時、「ここの田んぼは、力がみなぎって、気品がある。こんなに美しい田んぼは他にないぞ」と太鼓判を押してくださいました。
空は青く高く、山々は凛として、のどかな田園地帯に球磨川が滔々と流れゆく。そして、この先になつかしい人達が待ってくれている。ああ、なんて幸福!としみじみ思っていたら、列車が止まった。そこはあさぎり町「おかどめ幸福駅」でした(^−^)
あさぎり町は、美しい景観と、古代から続く豊かな歴史、心温かい人々という幸せの他に、「おかどめ幸福駅」があり、「幸野(こうの)溝」という江戸時代に掘削された灌漑用水が流れています。さらに、あさぎり町は日本最南端のリュウキンカの自生地であり、町の花にもなっています。このリュウキンカの花言葉が「必ずくる幸福」。もう、幸せてんこ盛り〜〜〜!

ということで、夏のイベントのテーマは「球磨のしあわせ小宇宙」をキャッチコピーに掲げることにしました。


おかどめ幸福駅(写真提供:あさぎり町) 


リュウキンカ(写真提供:あさぎり町)

「そんな素敵な町なら、行ってみたい」という方にお勧めなのは、人吉球磨グリーン・ツーリズム。農家に泊まって、自然や農作業など、いろんなメニューを体験するもので、熊本県農業コンクールで特別賞をもらい、熊本県代表として全国大会に参加したそうです。
今回、そのお宿を提供しておられる樅木さんのお宅にお邪魔しました。なんと、そこは、鎌倉末期の武家屋敷が並ぶ「麓馬場通り」の一角にありました。武家屋敷といっても石垣や生け垣しか残っていませんが、入り口に大きな木の門があり、そこから老木の並木に古びた石垣がずずーっと続き、いまだに中世の空気が漂っているよう。全国各地の武家屋敷って、たいてい江戸時代のものでしょう?中世の武家屋敷が、石垣だけでもこんなに残っているって、すごーい!近くには、中世の茅葺屋根のお寺も健在です。


麓馬場通り(武家屋敷跡)と、棚田のなかの阿弥陀堂
(写真提供:あさぎり町)

樅木さん宅も元武家屋敷。といっても、中世のですから「格式高い農家」という感じですが、敷地は山地もあわせてなんと5,500平米!「とくに何もないんですが、レピーターが多いんですよ。自分の隠れ家だって、自慢げに友達を連れてこられます」樅木さんご夫妻が家族のように温かく迎えてくださるのが大きな魅力なのでしょう。「来客をもてなすというのは、球磨の人柄なんですよ」という樅木さんの照れくさそうな、人なつこい笑顔が素敵でした。
 このグリーン・ツーリズムで面白いのは、球磨郡だけあって焼酎造り。子ども達の田植え・稲刈り体験なら他にもありますが、ここでは自分で作った米で焼酎を造り、子ども達が20歳になった時に、特製ラベルを貼ってお祝いに贈るんですって。長い間熟成されて、とても美味しい焼酎になるのだそうです。私なら、喜寿祝い用の焼酎ですね(^_^;)

千夏さんには、この秋にあさぎり町で講演していただくことになっています。どうぞ、あさぎり町のしあわせを満喫してきてください。


遠山桜(写真提供:あさぎり町)


高山・虹(写真提供:あさぎり町)