第248回 福島県の厳しい放射性物質検査

佐古和枝(在日山陰人)

おぉ〜、放射性セシウムによる汚染状況が「見える」!! すごいですね。パッと目には、まるで現代アートのよう。こんなふうに可視化してもらえれば、素人でも状況が把握できます。私もフィルムの上に寝転んでみたい(^_^;)

「見えない」、「わからない」という状況は、ことさらに不安や恐怖心を煽ります。病院に行って病名を告げられたらとりあえずほっとするのと似てるかな。現状や原因がわかれば、あとは解決にむけて対策を練ることができますからね。
あれ、待てよ。放射能汚染は、現状や原因がわかっても、解決策がないことがいちばんの問題ですよね。となると、こうやって被爆状況が可視化されたことによるメリットは、「もう原発はいらない」という世論を高めるためにはとても有効だと思いますが、こういう実態に対して、「だから、どうすればいい?」という不安への適切な答えが用意されていないと、やみくもに被災地への風評被害を煽ることになるのではないかど、少し心配です。

実はつい先日、福島県在住の方から、福島県が風評被害にたいそう苦しんでいるというお話を伺う機会がありました。福島県は、原発事故の後、農産物・水産物・肉類ともに、とても厳しい放射線物質の検査をしており、その情報を県のHPで詳細に公開しています。その結果、基準値の100ベクレル/s以下どころか、検出量が1桁というものがズラリと並んでいます。米にいたっては、全量・全袋を検査。2013年には、11,006,497点を検査して、100ベクレル/kgを超えたのは、なんとわずか28点だったそうです。もちろん基準値を超えたものは市場に出さないし、市場に出す米袋には「放射性物質検査済」のシールが貼られています。
「これだけ厳しく検査をしたうえで出荷しているのに、福島産というだけで、売れないんですよね」とのこと。市価より3割安くしても売れない。

この時、お土産にいただいたのは、郡山市名物の「あんぽ柿」。干し柿のなかに白なま餡が入っていて、とても美味しいお菓子でした。
「これも、長野県の柿を使っています。地元の柿でもまったく問題はないのだけれど、福島の柿では売れないから、わざわざ長野から取り寄せて、箱にこんなことを書いているのです」なんとも、やりきれない話です。
遠くに住んでいるから、被災地の方々のためにできることは限られているけれど、福島産の産物を購入することなら、できますよね。「みんなで買わなきゃ」と言ったら、「ただ買うだけじゃなく、支援のために、市価より高い価格で買うのよ!」と隣にいた友人に言われました。

放射線像の写真も、放射線被爆が「こんなに、あるよ」だけでなく「こんなに、ないよ」ということを伝えるためにも、使ってもらえないものかと思いました。

このコラムで、今年も終わりです。
来年は 今年よりもっとイイコトがありますように!
良いお年をお迎えください。