第232回 女神たちの活躍

佐古和枝(在日山陰人)

桜三月花吹雪・・・といっても、各地で開花時期に違いはありますが、春がきましたね〜。これからは、同居者がいなくても寒くない季節です(^_^;) 2月下旬に種子島に行った時は、暖流桜が満開でした。「明日は田植えの準備だ」とも。日本は広い!

さて、このところ出雲神話を読みなおしています。改めて思うのは、女神たちの活躍ぶりです。
主人公はオホナモチ(大国主命)ですが、その保護者的存在は神魂命という女神。そのオホナモチが兄神たちに殺された時、母神の刺国若姫の願いで生き返らせるべく神魂命が派遣したのが2人の娘神キサカヒ姫とウムギ姫。キサカヒは赤貝、ウムギはハマグリ。貝の汁で火傷の手当てをするという民間にも流布した治療でオホナモチを蘇らせました。

「ここにいたら、また兄神たちに殺されるから」と母神はオホナモチをスサノヲのいる根の堅洲国へ逃がします。その堅洲国で、オホナモチはスサノヲの娘スセリヒメと結ばれちゃう。スセリヒメが父スサノヲに「いい男神が来たのよ」と言い、スサノヲは「んじゃ、連れて来い」と言いました。
そこからが大変。オホナモチは、蛇の部屋とかムカデと蜂の部屋に入れられたり、野原で火攻めにあったり、スサノヲのムカデだらけの頭のシラミを取らせられたり、スサノヲがいろんな苦難を与えて婿を試すのだけど、なんとかクリアできたのも、スセリヒメがこっそり助けたおかげ。
それでスサノヲも2人の結婚を認め、この国を治めよということで「大国主命」という名をもらいました。

・・・というのが、千夏さんのお得意な『古事記』での話。オホナムチは、じつに多くの女神に助けられながら、葦原中国の最高神「大国主命」になったわけです。これらの話は、なぜだか『日本書紀』にはまったく記されていません。国家が編纂した『日本書紀』では、天皇家と関係のない話はどうでもよかった、ということかな。
 
『出雲国風土記』にも、神魂命をはじめ多くの女神が登場します。「御祖(みおや)神」という表現もよく出てきます。「御祖」が母親だということは、千夏さんのご指摘通り。岩波や小学館の記紀の解説にも、そう書いています。『出雲国風土記』では、地名の由来伝承になっている土地の女神の他、父神ははっきりしないまま女神が子を生んだ話とか、父神の名は書いてあるけど妻の女神が一人で子を生んだという話、女神が一人で国巡りをするなど、なかなか逞しい女神たちが登場しています。大国主命のための宮を建てさせたのも、風土記では神魂命の指示によるという話になっています。

女神が面白いなぁと思ってみているうちに、改めて気になったのはアマテラス。うむむ、でも、この女神さまは一筋縄ではいかないので、触らないでおこうっと。今回は、出雲の女神達のお話でしたっ!