第230回 大雪対策

佐古和枝(在日山陰人)

たいへんな大雪でしたね〜。東京や山梨など、いわゆる雪国ではない地域でのドカ雪は、「異常気象」という言葉を思わせます。ところで、友人に聞いた話なのですが、気象庁では30年に1度程度発生するような気象現象が発生した時に、「異常気象分析検討会」を開催することになっていて、その検討会の設置を決めた平成19年以来、毎年開催されているそうです。ということは、かつて「異常」と認識されたことが、いま「当たり前」になりつつある。それこそ、異常だ・・・

雪景色を見るたびに、豪雪地帯の縄文人や弥生人はどうしていたのかと気になります。そんな話、このコラムでも書きました(2005年12月、2011年1月)。遺跡で復元された竪穴住居の扉は、夜の間に雪が降り積もったら、雪に埋もれて開かなくなる。どうやって外に出るんだろう?というのが、サコの長年の疑問でした。

先日、東北出身の先輩との話のなかで「竪穴住居の土床なんて、冬は冷たくて、とても寝てられない」「だから、高床にするんだ」と言われて、「えっ?高床ですか??」
残念ながら、そこで話は時間切れ。竪穴住居を高床にする? それなら眠れそうだけど、どんな構造になるんだろ?? 発掘した時、高床構造の痕跡は?? 気になって眠れないサコでした。

と、ここまで書いて、名案を思いつきました。冬は、高床建物に寝ればいい! そうすれば、土床ほど冷たくないし、夜の間に雪に埋もれて外に出られなくなる心配はありません。おぉ〜、素晴らしい。

教科書的にいえば、高床建物は湿度の高い中国南部とか東南アジアに多く、日本の遺跡でも湿気を避ける穀物用倉庫だとか夏用の住まいだといわれてきました。寒い地域や多雪地帯では冬の住まいだったかも・・・。

もっとも、高床建物が冬の住まいかどうかなんて、確かめようもない話です。ただ、一般的な弥生集落では、高床建物は竪穴住居数軒に1軒くらいの割合なのですが、山陰では両者がほぼ同数に近いという集落がけっこうあるんです。わが妻木晩田遺跡もそうです。だから、雪の季節の住まいだという見方は、イケてるのではないかと一人ほくそ笑むサコ。となると、北陸や東北はどうなんだ?と気になりますが未確認。なんせ、たった今、思いついたことなので(^_^;)

もちろん、冬でも竪穴住居で寝られる知恵や工夫があったかもしれないし、古代人はナマクラな現代人よりはるかに頑丈で平気だったかもしれません。中世ヨーロッパの修道院では、冬の間の最高の客人のおもてなしは、寝床として新しい藁を用意することだったそうです。石の上でも藁で寝ていたなら、縄文人も土床で草で寝たのかも。

わからないけど、こうやって想像をめぐらせていると、節電モードとはいえいかにわれわれが暖房でぬくぬくと暮らしているかとか、東北の被災地の仮設住宅も寒くて大変だろうなとか、いろんな“いま”が見えてくる。原発なんぞ、なくても生きていけるはずだということも。

ひと昔前からみれば「異常」なことが、いま「当たり前」になりつつあるのは、気象現象だけではなさそうです。


妻木晩田遺跡の高床建物