第226回 小水力発電の話

佐古和枝(在日山陰人)

コリンスカヤ ということで、みなさん、ガッテンしていただけましたでしょうか?

一同 ガッテン、ガッテン

机をドンドン叩く。

チナチンスキー えらく簡単だなぁ(*_*) ま、いいか。んじゃ、地球最期の日が一日でも先延ばしになるよう、それぞれに頑張るように。健闘を祈る。バイバイ

〜ってなところで、この話は終わり

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ところで、千夏さんに「小水力発電がいいらしい」と吹き込んだサコですが、実はまだ一度も現物を見たことがありません。またもや千夏さんに追い越されたなぁ〜と思っていたところ、うちの近所の大学で「コミュニティ政策学会」が「自然エネルギーとコミュニティ〜小水力発電の共同管理は地域をどう変えるか」というシンポジウムを開催するというので、遅れを挽回すべく行ってきました。以下、少し長くなりますが、その報告です。


まず、実際に小水力発電による地域づくりに取り組む事例報告が3件。

1番めは自然エネルギーに取り組む市民団体で、小水力発電の他、バイオマスや太陽光・熱のプロジェクトにも取り組んでいる。
2番めは、過疎と高齢化に悩む地域をなんとか再生させたいという思いから自給エネルギーとして小水力発電を始めた。
3番めは「水車大好き」の元カメラマンが小水力発電の会社を立ち上げて、ある村で稼働にこぎつけた。

動機も活動内容も3者3様ですが、共通するのはいずれも外部の人またはヨソから移住してきた人達が発案し、地元の人達と議論を交わしながら合意形成し、信頼関係を築いて、ともに取り組んでいることです。

小水力発電はたんに電気を作るというだけでなく、「自分たちの手の届く発電」であり、「自分たちでつくっている」という達成感がある。だから、それぞれに、苦労はありながらも楽しそうでした。

とくに2番めの、岐阜県郡上市白鳥町石徹白(いとしろ)で小水力発電に取り組んでいる平野彰秀さん(NPO法人「地域再生機構」副理事長)の言葉が印象的。

・日本が次にめざすべきは「足るを知る」社会
・地域の特性や知恵を活かした地産地消の自然エネルギーがカギとなる
・自分たちの手で自分たちの暮らしを作っていくという自治の精神を取り戻す
・豊かさとは、信頼できるコミュニティー、人と人のつながりがあって、お金に頼り過ぎず
に生きられること。互いに融通しあい、「おすそ分け」できる経済の方が安心。

いとしろでは、小水力発電によって電気代不足で休眠していた農産物加工所が稼働を再開し、「ふるさと食品加工組合」が設立されたり、地元の食材を使ったカフェや地元の生活文化を体験できる「いとしろ青空学校」、修学旅行民泊受け入れなど、さまざまな取り組みで、地域に活気が生まれている様子です。


いとしろの水車


事例報告の後、早稲田大学の鳥越皓之教授(環境社会学)の講演がありました。以下、要点抜粋。

・農村にはもともと資源(田畑)があり、資源からエネルギー(生産物)を得ている。
・エネルギーを得たら、補充せねばならない。それは山・野原・川・池などから得る肥料
・山・野原・川・池は、みんなが生きるために必要だから、何百年あるいはそれ以上もの長
い年月、みんなで無償労働により共同管理してきた。それは膨大な労力が必要である。無償労働をいかに制度化するか、ということで、「村」が成立。
・みんなで維持管理してきたから所有感が弱いため、いま日本でもっとも破壊されている。
・山・野原・川・池からのエネルギーを外部化する際、そこからエネルギーを得て生活をし
ていた人達の権利が失われるということに、思いをいたさねばならない。
・大事なことは、地球環境のためとか経済効果とか社会正義のため、ということではなく、「みんなが納得できる施策」のため、という方がいい。経済効果とか社会正義というのは、
みんなが納得できるための要素にすぎない。

続いて、帝塚山大学の中川幾郎教授(文化政策)のコメントがありました。

・「みんなが納得できる」というのは、公共の利益をどう考えるか、である。

・公共の利益には、interest(経済的利益)とbenefit(社会的正義)があり、それは時に矛盾する。それを克服するのが「納得」の論理。多数決ではなく熟議を尽くすこと、みんなの気持が落ち着くまでトコトン話し合うことが大切。

・「みんなが納得できる」に至るには、共に暮らした時間の長さ、共に暮らした空間の大きさ・重さが大きなカギとなる。だから、生産を共有できる経験が必要。一緒に汗水流して作ることが大事。いまは消費の共有体験ばかりである。村祭りのように、「楽しいことを共有する」をもっとやった方がいい。

「みんなが納得できる」ってとても難しいことですが、だからこそ多数決ではなく熟議、決めるまでの過程が大切なんですよね。あれほど反対意見で沸騰した世論を無視して、杜撰で危ない法律を強引に通してしまう政府のやり方をみるにつけ、そう思います。

というところで、今年も残りわずかとなりました。
みなさま、良いお年をお迎えください。