第210回 アイルランド訪問記

佐古和枝(在日山陰人)

天候不順とはいえ、春ですね。私も毎月「むきばんだを歩く会」で植物観察をしていますが、草花の写真って、けっこう難しい。千夏さんは、お魚だけでなく植物の写真もうまい!

新学期を目前にした3月下旬から4月上旬に、イギリスの西隣の島アイルランドに行ってきました。「アイルランドに行くんだ」というと、必ずと言っていいほど「なにしに行くの?」と聞かれました。ただの観光旅行の行先としては、珍しいのかな。「物騒なんじゃないの?」という反応も。いえいえ、穏やかで優しく美味しく素敵な国でした。

訪問先は、観光地として定番の聖パトリック大聖堂、ダブリン城、クライストチャーチ大聖堂、チェスター・ビティー美術館、世界でもっとも美しい本ともいわれる「ケルズの書」を展示するトリニティー大学、世界遺産のジャイアンツ・コーズウェイなど。雨の多いアリルランドでは珍しいといわれるほど晴天続きだったのは、晴れ女サコいまだ健在か(^_^;)


トリニティー大学の古い図書館


ダブリン城


熱弁をふるうニューグレンジの遺跡ガイドさん

アイルランドといえばケルト文化が有名ですが、今回の旅でサコのいちばんの楽しみは、ケルトの人々がこの島にやってくる以前の時代、ニューグレンジという世界遺産になっている5000年前の巨大な墳丘墓です。「エジプトのピラミッドより古い!」というのが地元のガイドさんの自慢でした。


復元されたニューグレンジ


ニューグレンジ古墳の模型

丘の上に広がるのどかな農村地域に位置するブルー・ナ・ボーニャ遺跡群には、約40の古墳があります。そのうち最大規模を誇るニューグレンジは、直径が70m前後ある墳丘に、長い通路と巨石を使った石室が3つ。その入口の正面に渦巻き文や菱形文を浮彫にした石が置かれています。学生時代にその写真をみて、とても印象づけられたのですが、いったいそれがどこのどういう遺跡なのかは覚えていませんでした。出発前にツアーの行先を調べて、「あ〜、これだ!」と(^_^;)


ニューグレンジ古墳遠景


石室入口前の彫刻のある石

日本でいえば縄文時代の中期。青森県の三内丸山遺跡が栄えた頃です。その頃に、日本の古墳時代のようにボコボコ大きな古墳を造り、横穴式石室と同じ構築法を使って巨大な石室を造っています。その石室への入口の上に小さな窓があり、冬至の日にはそこから朝日が奥室まで差し込むということで知られています。太陽を意識したという建造物は、ヨーロッパやアフリカ大陸、アメリカ大陸など各地にありますが、日本ではあまり明確ではありません。
 
ところ変われば、遺跡も変わる。渦巻き文様・同心円文・菱形文様など、縄文人や弥生人、古墳時代の人々もよく使う文様ですが、それが何を意味していたかは、それぞれ違いがあるでしょうね。また日本とアイルランドは、ともに島国で、海の向こうから伝わる文化や人々に大きく影響を受けたとはいえ、影響の受け方もその後の展開も大きく異なります。人類社会がいかに多様な価値観と多様な選択肢をもっているか、改めて思います。

日本を離れてみると、日本がよく見える。同じ意味で、遺跡というタイムマシンに乗って過去を旅すれば、現代社会がよく見える。たまには自分の居場所を確認する時空の旅にでかけてみること、おすすめします。海外旅行はお金がかかるけど、遺跡や博物館は近くて安い!5月の連休は、どうぞ古代への旅へ!


ナウス古墳の石室通路(パンフレットより)


ダウス古墳の石室(パンフレットより)