第194回 人こそ宝

佐古和枝(在日山陰人)

千夏さん、お帰りなさ〜い。ボニン島については、千夏さんの著書『海中散歩でひろったリボン〜ボニン島と益田』でたくさんのことを教えてもらいましたが、現地リポートによって改めて「日本にこんな島があるんだ・・・」と感嘆するばかりです。
島といえば、竹島とか尖閣諸島とか、もう暗澹たる思いに陥る話題ばかりの今日この頃ですが、そんなキナ臭い世界とは無縁のような、平和な運命共同体ボニン島は、これからの人類社会がお手本にすべき地球のあり方の縮図のようですね。
世界遺産をめざす動きは今も盛んですが、観光客が押し寄せて迷惑とか環境が荒れたとか、あまり良い話は聞かない気がします。ボニン島はハンパなく遠いから、大丈夫ですよね。

いまの日本、第一次産業、第二次産業が頭打ちとなり、あちこちのまちが観光に力を入れるようになりました。エコだアグリだグーリーンだと、いろんなツーリズムが提唱されていますが、結局「自然」と「歴史遺産」は不動の定番といえるでしょう。
いままでは、ただあればいいという感じだった「自然」や「歴史遺産」も、観光客を増やすために、遊歩道ができたり、利便施設が建設されたり、駐車場が増設されたりなどしています。そういう整備もたしかに必要かもしれないけれど、自然環境を壊したり、景観をそこねたりなどの問題もあり、どう折り合いをつけるかが難しいところです。
遺跡も歴史遺産なので、本当はもっと観光客が来てくれていいと思うのですが、概して歴史的建造物や歴史的街並みに比べて地味だから、観光資源としてインフラ整備しようという動きは乏しく、予算は削られる一方です。


妻木晩田遺跡を見学する子どもたち

遺跡を観光資源にすることの是非はさておき、環境を傷めず、予算をかけずに文化資源の魅力を高めてくれるのが、地域住民の活動です。最近は、人を見にいくツアーというのも盛況とのこと。つまり、「地元の人たちが素晴らしい活動をしている。ちょっと行ってみよう」というツアーです。
それは、行政が金もない&人手もないから市民にやってもらおうというような上意下達の市民活動ではなく、地元の人たちが本当に、その自然や文化遺産を愛しているためにおこなっている自発的な活動です。そういう人たちに磨かれてこそ、石も輝き玉となる!「自然」も「歴史遺産」も、地域住民に愛されていることが、それらの価値や魅力を倍増させ、訪れる人の感動を増幅させ、そのまちの文化度の高さを印象づけます。
言い換えれば、「素敵なまち」にするのも「何もない、つまらないまち」にするのも、いまそこで暮らしている人たちが、そのまちが(潜在的に)もっている魅力や価値とどう向き合っているかにかかっていると思うんですね。
そういう意味で、ボニン島の魅力は、たんに自然が美しいというだけでなく、ボニン島の人たちの魅力でもあるんだろうなと思いました。それに魅せられた千夏さん、なかなか縁は切れそうにないですね。


ボランティアガイドが案内する妻木晩田遺跡