第188回 ■韓国全谷里遺跡旧石器祭り■

佐古和枝(在日山陰人)

5月の連休、千夏さんは、わが故郷鳥取でお話してくださったんですね。その頃、私は韓国にいました。韓国でも、5月5日は子供の日です。それにあわせて5月4日から8日までの5日間、韓国を代表する旧石器時代の全谷里遺跡で、大規模な子供向けのイベント「旧石器祭り」があるのです。韓国では、このような遺跡でのイベントとか考古学を市民や子供に伝えようという活動はまだあまり盛んではないのですが、全谷里遺跡は別格。このイベントは、20年も前から毎年開催されており、最近では全国から数十万人が集まると聞いていたので、一度行ってみたいなと思っていました。
韓国各地の博物館や考古学研究所だけでなく、3年前から国際フェスティバルとなって13ケ国の博物館や大学、考古学研究者が招待されて、子供向けのワークショップや古代技術の実演をおこなうようになりました。私は、日本チームとして招待された長野県長和町の黒耀石ミュージアムが一緒に行こうと誘ってくれたので、行ってきました。

遺跡は、ソウルから北へ約2時間ほど、さらに車で15分も走れば38度という漣川群にあります。北朝鮮軍が攻めてきたらどうしよう・・・なんて不安はどこにもなく、日本で竜巻が暴れているなんて想像もつかないほど、平和で爽やかな青空が広がっていました。


この遺跡公園は、以前にもこのコラムで少し紹介しましたが、等身大の旧石器時代人のブロンズ像があちこちで当時の生活を再現しています。

イベント期間中、遺跡公園にはアドバルーンがあがり、数え切れないほどのテントがはりめぐらされています。これらのテントは、体験学習のブース、食堂、休憩所など。

子供たちは、参加申し込みをすると、豹柄のコスチュームを渡され、顔や手にペインティングをしてもらえます。これで、あなたも旧石器時代人!こういうアイデアは、日本の遺跡イベントには、ないものでした。

ワークショップ&実演のブースは、スペイン、台湾、日本、インドネシア、リトアニア、オーストラリア、イタリア、イギリス、中国、アメリカ、ロシア、ウズベキスタン、そして韓国の8つの博物館や研究所が参加。それぞれに楽しいメニューが用意されていました。

驚いたのは、幼稚園児の多いこと!日本では、ほとんどのイベントが小学生以上しか考えていないと思います。反省、反省。

海外のブースには、徴兵された大学生の軍人さん達が、英語・日本語・中国語・スペイン語の通訳として大活躍でした。みな、爽やかで素敵な若者たちでした。こんなイイ子たちを戦場に送るなんてこと、絶対にしちゃいけない!

会場には、ときおり役者さんが扮した旧石器時代人や新聞紙で作った恐竜が現れて、場を盛り上げていました。旧石器時代人たちは、巨石運搬の模擬体験を指揮しています。

その他、いろんなお楽しみメニューがありました。


参考までにこの旧石器祭りのおもなメニューは以下の通り。
先史体験国際交流展、旧石器バーベキュー、原始動物狩猟体験、旧石器巻き狩り、旧石器パレード、原始人家族の一夜(家族体験10チーム)、子ども主題公演(キャラクターショー)、漣川郡農業特産物販、農耕生活体験、旧石器スタンプラリー、私も原始人家族、など。また、遺跡に隣接して、これまたおシャレな博物館があります。


いやいや、まさに聞きしに勝る、楽しく刺激的なイベントでした。日本とは、イベントの規模が違うし、子どもを楽しませるためのアイデアは豊かで奔放、また看板や掲示、パネルのデザインもおシャレでした。わがムキバンダでもやってみようと思うこと、いろいろみつけてきました。日本の遺跡のイベントも、もっともっと自由な発想で楽しくしなきゃいけませんね。考古学興行師サコ、もっともっとがんばろう!

(写真提供:Mr.Donald Henson,Sako)