第182回 ■やればできる!〜リベリアの女たち■

佐古和枝(在日山陰人)

いやはや、とんでもないおばさんがいるものですね。テレビや新聞のネタなら珍しくない話と受け流しそうですが、身近にそんな人がいたら、そりゃ大変です。白状してケロリとしているっていう図太さは、タダモノではない(~_~;)

話はまったく違いますが、「女も、やればできる!」ってことで思いだすのは、先日テレビでみたドキュメンタリー映画「内線を終わらせた女たち〜リベリア」です。
1989年から内戦が続いたリベリアで、飢餓と疫病と殺戮とレイプによって、絶望のどん底にいた女たちが「もう〜、ええ加減にせんかい!」と反戦運動に立ち上がった。
あでやかな衣装が大好きなリベリアの女性たちが、聖書の故事に倣って白装束に身を包み、毎朝大統領が出勤する道路の脇に2500人も集まって、プラカードを掲げたり、シュプレヒコールしたりして訴えた。
女性ならではの武器を使おうということで、セックス・ストライキもした。
政府軍だけでなく、反政府勢力も難民キャンプを襲うから、どっちもどっち。もうウンザリだ。

彼女たちは 独裁制をしくテーラー大統領に直談判、周辺諸国の協力も得て、反政府勢力との話し合いの場を作ることを約束させた。
しかし、アフリカ各国大統領も集まってガーナで開催された和平交渉は、1ケ月半たってもチンタラして埒が明かない。1000人ほどが集まっていた彼女たちは、会議場で座り込みをしたり、一人一人と個別交渉をしたり、「逮捕するなら、ここで素っ裸になるぞ」と服を脱ぎかけたりなどした。

とにかく粘り強く活動を続け、国際社会の支援も得て、ついに内線を終わらせ、アフリカ初の女性大統領を誕生させた、というものです。
この活動の中心となったリーマ・ボウイーさんと、彼女たちの後押しで大統領になったエレン・サーリーフさんは、昨年ノーベル平和賞を受賞しました。

凄いなと思ったのは、この活動が宗教の壁を越え、キリスト教徒とイスラム教徒が一緒になって活動したことです。一緒に讃美歌を歌い、断食をし、平和を訴えた。これは、男性にはできないことでしょう。

彼女たちの活動は多くの人々に、平和だけでなく、「やればできる!」という勇気や希望を与えてくれたと思います。いや彼女たちの場合、女だからできた、という方が正解ですね。死も覚悟した活動だったからできた、ともいえる。それほどに、戦争の被害者であることを強いられてきた女性の怒りと絶望が深いものなのだと思うにつけ、彼女たちの勝利を祝福する気持に切なさがともないます。

活動中のリーマ・ボウイーさんが言いました。「将来、子供たちが尋ねるでしょう。あの危機の時、ママたちは何をしていたの?と」。いまの日本も、東北大震災と原発事故という大変な危機にあります。「あの時、お婆ちゃんたちは何をしていたの?」と子供たちに尋ねられた時、恥ずかしい思いをしないよう、自分にできることをキッチリやっておかなきゃなぁと思います。