第175回 ■秋雨の吉野ヶ里■

中山千夏(在日伊豆半島人)

すっごく不思議なことがあったのよ。
今度、サコちゃんと行く東松島市の里浜復興イベント
(⇒http://www.biology.tohoku.ac.jp/garden/satohama/index.htm
に友人が何人か参加する。ひとりは亡きばばこういちさんの妻、M子ちゃんなんだけど。彼女がね、里浜ゆきのことについて電話してきた。私じゃなくて、我が花林舎社長のK子ちゃんに。
ところがあいにく、K子ちゃんは東京へ出張中。事務的な問題につき、私はまったく役に立たず、K子ちゃんにケータイしてねってことで、さんざん雑談して電話はすんだ。
で、K子ちゃんにケータイで報告した。そうしたら、もうM子ちゃんからメールが屆いたとのことだった。
しばらくして、K子ちゃんから電話があった。「なんと、渋谷を歩いていたら、M子ちゃんとばったり会いました!! それで今、お茶したの」

K子ちゃんは渋谷での打ち合わせに向かうところ。M子ちゃんは、里浜ゆきの買い物してたんだって。もちろん申し合わせたわけじゃない。不思議だなあ。ふたりとも、年中歩くような場所じゃないのよ。毎日電話で話すわけでもなし。電話し合ったその直後に、広い東京の一地点でふたりが遭遇するなんて!

こういうこと、何度もある。その度に偶然は神秘だと思う。知り合いが多ければ町で知り合いに会う確率が高くなる・・・ってだけのことなのかもしれないけれど(;^_^A なんかトモダチの赤い糸を感じてしまうのだった。

そう言えば、行ってきました、10月29日、吉野ヶ里歴史公園でのフォーラム「よみがえる邪馬台国」。私は午後に開かれた「吉野ヶ里と出雲王国」に参加。
これにもちょっとした偶然の神秘があったよ。出席は早くに決まっていたんだけど、テーマは最近決まった。それが出雲だったからびっくり。ほら、ここにも書いたけど、先月、島根県の田和山遺跡のシンポジウムにサコちゃんと行った。そのあとで吉野ヶ里のテーマを聞いたのよ。驚きながら密かに喜んだ。ちょうど田和山のためにまとめた考え、〈古事記〉から見る古代出雲や、出雲の主神が女神であることなんかを、そのまま使えるからね(;^_^A 勉強手抜きできた。あはははは。


秋雨の古代の都はかくばかりかと吉野ヶ里

古代史の狩野久さんの基調講演に続けて、島根県の川原和人さん(島根県の遺跡専門職)、七田忠昭さん(佐賀県の遺跡専門職)、湯村功さん(鳥取県の遺跡専門職)といっしょに、吉野ヶ里の大黒柱・高島忠平さんの司会で話をした。
佐古せんせ、ひいては森浩一せんせの赤い糸のおかげで、私も遺跡関係にずいぶん友だちができたなあ。
去年よたよたしていた忠平さんは、膝を手術して、まっすぐのばして歩けるようになっていた。七田さんはなんと今、佐賀県立博物館の館長だって。ちっともお変わりなく、楚々としておられた。いや、お変わりありかな。完全に邪馬台国近畿説から脱却して、今や九州説にどっかり確信。うふふふふ。
そしてまた、狩野さん!
会うなり「佐古さんからよくお噂を聞いていますよぉ」と言われた。私もサコちゃんから「狩野せんせ、仲良し!」と聞いていたので、たちまち打ち解けて。おかげで、とても楽しい二日間だった。
サコちゃんが大好きなのも当然、という優しい親切な先生だったよ。こんなことも、ちょっと赤い糸の感じ(^_^)


生憎の雨で修学旅行生はお気の毒


どうしても言いたいことがあった。午前中のフォーラム、これからの遺跡公園の課題についての話し合いを聞いていて思ったことだった。
でも午後はテーマが違うし、例のごとく時間が足りない。それで、忠平さんが閉会を宣言したあと、3分ください、とステージの前に飛び出して、ほかの先生がたにはお引き取りいただいて、話した。ざっと、こんなことを言った。
「今、里浜貝塚公園や東松島歴史資料館の復興をちょっとだけ手伝っている。津波の被害だけなら大変さも半分だった。蕎麦の栽培や、牡蠣を味わうイベントも、今までどおりやったにしても、みんなに食べることを勧めるかどうか躊躇しなければならない。どんなに立派な公園や博物館を造っても、原発があってはなんにもならないとつくづく思う。遺跡のためにも原発はなくしたい」
そんなことを言って「私のための原発メモ」を紹介した。
忠平さんは最後まで司会席でお付き合いくださった。聴衆も温かく、あとでメモ冊子を注文するひとたちもあった。ほっとした。

こんなことも考えた。災害と遺跡、というテーマで古代史のシンポジウムやったらどうかな、と。まさに前回のサコちゃんのコラム、私のその考えにぴったりだったね。ああいう話をみんなにわかりやすく。
今度の仙台での前夜祭シンポ、ふたりで司会だから、そういう話題も盛り込めるかな。

ところで、カミムスヒは女神だ、という話をまたしたんだけど、狩野さんも初めて聞いたんだって! 思ってもみなかったそうで「私も〈古事記〉を調べてみます」って。
ネットにアップしている私の説をコピーしてさしあげたから、たぶん読んでくださってると思うけど。
「カミムスヒ女神のこと」花林舎HPから読めます⇒http://homepage3.nifty.com/Karinsha/
〈古事記〉についていろいろ話してくださった。ずうっと疑問だったことも聞いてみた。なんか、聞きやすいせんせなのね。「〈古事記〉は上程された時、何に書かれていたんですか?」。答え「・・・そんなこと知りませんよ」あははははは。でもたぶん、もう紙に墨だったろう、と。
狩野さんの話に刺激されて、ちょっと本居宣長せんせの「古事記伝」も読んでみようかななんて(;^_^A「とってもおもしろいよぉ」とおっしゃるから。テキストなにがいいか教えてもらってきたよ。

ともあれそんなわけで、女に原発。
古代と現代、遺跡と現代は、私のなかでしっかりつながっていることを、再確認した吉野ヶ里でした。


フォーラム会場いつもの入り口前広場に