第165回 ■脱原発と脱兵隊と■

中山千夏(在日伊豆半島人)

サコちゃん!
いかにもごもっともなので再録してしまう。ガッカイの菌。

■ジコチュー菌〜自分の考えは絶対に正しいとか自分は賢いと思ってしまう。
■カタガキ菌〜学問の中身より肩書や経歴でエライかどうかを判断してしまう。
■オタク菌〜自分が関心のあるテーマ以外のことを考える脳ミソが溶融してしまう。
■ナカヨシ菌〜仲間の学問的・社会的・道徳的な間違いは黙殺・隠ぺいしてしまう。
■ナイショ菌〜重要な情報・資料は他人に見られないように隠さなきゃと思ってしまう。
■ヨコドリ菌〜仲間が飲み屋で語ったアイデアを、つい自分の論文で書いてしまう。
■サクリャク菌〜自分より優秀そうな人がいると、つい足をひっぱったり妨害してしまう。

外からの観察だと「オタク菌」と「ナカヨシ菌」がよくわかるです(;^_^A
もうひとつ付け加えたいのがある。

■ワンコ菌〜犬みたいに上下関係に敏感で恩師・先輩がハバをきかせる。

これは特に学問では致命的に私には見えてます。敬しあいながらも対等に対峙できるようでなくては、学問の発展はないでしょうに。

でもこれらってガッカイに限らず、一流企業から暴力団まで、男臭い集団の特徴だという気がしてきたなあ。
最近ジェームズ・ギリガンという研究者が書いた『男が暴力をふるうのはなぜか そのメカニズムと予防』(佐藤和夫訳、大月書店)を読んだ。ごく乱暴に言うと、家父長的ジェンダー教育では、男子を「兵隊」に仕立て上げるべく、「男らしさ=闘争的・暴力的」であることを求める。そこで暴力の最大の心理的動機は「恥をかかされた感」なのだが、男子の場合、最大の恥は男性を否定されることなので、恥をすすぐ、すなわち男性を回復するために、男子は闘争的・暴力的になりやすい。いっぽう、同教育下で女子の場合、暴力的であることはかえって恥なので、女子が恥の解決に暴力に走ることはない。

原発、ガッカイ、政府、財界やマスコミの上層、一見して圧倒的に男が多い集団だよね。そこを見て、私がマズイなあと思う諸点は、ことは暴力ではないけれど、暴力についてギリガンが言っていることと、深く関係あると思うです。

要するに伝統的な家庭教育や社会教育では、男子は「兵隊」向きに育てられてしまう。文字通りの兵隊でなくても、「企業戦士」とか「外に七人の敵がある」お父さんとか。そして彼らの集団は「軍隊」にならざるをえない。ワンコ的上下関係、肩書がモノを言う、仲間内の間違いを隠蔽する、これらはまさに軍隊の特色。そこでは下は無価値、上に上がるほど貴重だから、貴重になりたい兵隊は、他人の功績の横取り、足ひっぱり、なんでもする。さもなければ、自分は賢いと思い込んだり、自分の研究に没頭したりして、現実逃避する。すべて、軍隊に生きる兵隊の習癖でしょう。

そして軍隊ほど、学問がすくすく育つ畑に相応しくない場はないし、軍隊ほど、命や暮らしを考えるのにむかない場はない。今のままでは、男子はガッカイに向かない。命や暮らしに影響する政治や役所には向かない。
だから私、最近つくづく思うわけ。伝統的な家庭教育、社会教育を変えないとって。男子を兵隊に育てないようにね。
しかし、はあああ〜脱原発と男子の脱兵隊と、どちらも時間がかかりそうだにゃ〜。