第129回 ■ヤマト民族ってなに?■

中山千夏(在日伊豆半島人)

最近、アイヌのひとたちの話を聞く機会があってね、「民族」についてぼちぼち考えているところなの。
知ってたぁ? 私、不勉強でぜんぜん知らなくて、びっくりした。
国連が「アイヌは先住民族である」と認めたんだってね。それで、2007年に国連で「先住民宣言」が成立した時の記念講演に、先住民を代表して、アイヌのひとが講演したんだって。
日本国はこの宣言に賛成した。これを受けて08年に日本の国会は、「アイヌ民族を先住民族とすることを(政府に)求める決議」を全会一致で採択した。それに、もっと驚いたのだけれど、国連は沖縄人も「先住民族」と認めたんだって。
今や日本は国際的には、ふたつの先住民族を抱える国家なわけよ。
その認識と覚悟、非先住民族日本人に、果たしてどの程度ある?

歴史的に見て、アイヌ人、沖縄人が先住民族であることに、私はまったく賛成だ。特にアイヌ人については、アメリカ・インディアンによく似た近代史があるから、わかりやすい。
てか、アメリカ・インディアンに対するアメリカ合州国の仕打ちに憤りながら、日本国がアイヌ人にした行為を、知っていながら、同列と感じていなかった自身の不足を、つくづく思い知っておるところです(^^;)

でね、反省とともに、常日頃からうっすらと気にかかっていた民族問題が、やや本格的に気になってきた。
最大の問題はね、私はなんなのだ、ということなのよ。

アイヌ人や沖縄人、それに在日は、イヤでもオウでも、自分が何民族なのか承知している。私にはそれ、ない。古代史やってますますなくなった。

自分は日本人だ、というのは問題ないの。日本で生まれて日本国籍持ってて日本語喋って生きてるんだからね。
でも日本民族である、と言うのには抵抗あるなあ。
ニホン民族ならまだ抵抗少ないと思う。民族となると、日本をヤマトと読むでしょ。ヤマト民族と言われると、えええ、ちがうよ〜、と言いたくなる。

だって私の知る限り、ご先祖は熊本と福井だもん。古代、近畿を中心に発展したヤマト国家の成員をヤマト民族というのなら、うちのご先祖はそれとは無関係だった可能性が高い。むしろ熊本方のご先祖なんぞは、クマソと呼ばれて「征伐」されていた公算が大だ。

私の考えでは、熊本も福井も、ある時期から連合国的なつながりはヤマトとの間にあったろうけど、同民族という共通認識はなかったはず。言葉からして、めっちゃ通じなかったはずだよ。
日本全土にヤマト民族とかヤマト魂とかヤマト撫子とかをおっかぶせだしたのは、外圧におののき始めた幕末以来の新しい流れでしょ。それで、ウチナンチューもアイヌも、津軽人も熊襲も、みいんなヤマト民族もしくは二等ヤマト民族に編入されてしまった。
アイヌや沖縄人はその歴史がはっきりしているから、自己認識もはっきりつくのだと思う。
でもねぇ、クマソや津軽人やそのほかもろもろは、編入された歴史が古くていまいち明確じゃないから、私みたいに乏しい知識でちょっと考え始めると、わけわかんなくなっちゃう。

骨でいきますかね!
吉野ヶ里で、遺跡からでた骨を調査した結果の展示を見た。それによると、乱暴に言って、縄文人は丸顔、弥生人は面長、たしかそうだったと思う。ところで、アイヌ人が主張するところでは、縄文人とはアイヌ人にほかならない。ある時期までの考古学は、今の縄文土器をアイヌ土器と呼んでいたんですって?
だけど、アイヌ人の顔の骨格は、どちらかというと面長な気がする。
私はどっちなんだろ。仮に弥生人骨格だとして、弥生人=ヤマト人だとしたら、私はやっぱりヤマト人なのか?

うううむ、骨も難しいなあ。
そもそも、縄文人と弥生人は、人種が違うわけ? ガッカイではどうなの、丸顔の縄文人を面長の弥生人が駆逐したことになってるわけ? 考古学的にはヤマト民族って、どう規定されているの?
そのあたり、佐古せんせ、教えてくださ〜い。
自分がナニ人なのか、そろそろ決めたいからね。
ま、決めなくてもどうということはないのかもしれないけどさ。