第97回 ■酒は女のサガかいな?■

中山千夏(在日伊豆半島人)

出雲の話の続きだけど。
あれ、耳が立ったなあ。

夜、参加者有志で小さな宴会したよね。
お店は、ごいっしょした関和彦センセ(古代出雲にかけては当代一、二の学者なんだってね!)の紹介。なんともいいお店だったね。

雲州平田の木綿街道という古い町並みのなかにあって、しもたやそのまんまの風情。大正か昭和初期に戻ったような。
ひとりでおいしい料理を作っては運んでくるオカミサンがまたよかった。楚々と美しく、それでいてシャキッ。たすき掛けの和服姿が身についてる。若いのに。

びっくりしたのは、彼女のお店、夏期限定。なぜなら本職は杜氏だからだというじゃない。だから酒造りの時期には、飲み屋は閉店なんだって。
へえええ、珍しいねー、女性の杜氏、と思わず言ったら、関さんだったと思うのだけれど、「ええ。でも、本来、女性でしょう、トジですからね」との声があり、何人かが、そうそう、とうなづいた。たしかサコせんせもうなづいていたような。
はい、耳が立ちました。ぴんっ!
でもカラダはお酒になびいてたもので(;^_^A、それ以上、その話を追っかけなかったのだけれど。

古事記にも出てくる女性のエライ人を表すトジ(トウジ、刀自)と、酒造り職人の長を表すトジ(トウジ、杜氏)と、音が同じとはわかっていたけど、意味も同じかも、とは考えたことがなかった。
ちょっと調べてみたんだけど、我が古語辞典によれば、トジはトヌシ(戸主)が転じた言葉。家で一番エライ女のこと。(家で一番エライ男はイヘキミなんだって)。
そんな言葉で酒造りの長が呼ばれてきたということは・・・・・・

お酒って、本来、女が造るものだったのかしらね? 造って飲む、それが古代の女だったのかしらね?

むふふふふ、酒好きのわれわれにとって、これはなかなかいい話。
どうもへんだと思っていたが、酒になびくのは女のサガかぁっ〜〜〜〜