第92回 ■文化・歴史は備品、知事は消耗品■

佐古和枝(在日山陰人)

ほんとに、大阪はどうなることやら。弥生文化博物館は、千夏さんをはじめとする「おんな組」のみなさんや、韓国考古学界からも応援してもらい、来年度に売却という最悪の事態は避けることができました。しかし、「当面存続」とは、執行猶予がついたということにすぎず、無罪放免になったわけではありません。むしろこれからが真価の問われるところ。長期戦になりそうです。
一方、おそらく弥生博より国内外で評価は高い児童文学館は、今年5月に手塚治文化賞の特別賞を受賞したにもかかわらず、廃止のまま。補助金打ち切りです。

阪神淡路大震災で莫大な借金を抱えた兵庫県は、復興のテーマを「文化創造」とし、優れた文化施設・文化事業に投資して、めきめき評価を高めています。過疎と高齢化で、これまた深刻な財政危機にあえぐ島根県は古代出雲歴史博物館を新設し、20億円以上の経済効果をあげているとのこと。福岡県は九州歴史資料館を、三重県は県立博物館を大規模にリニューアルします。文化や歴史は、余剰財産で賄うようなものではなく、地域の活性化のための貴重な資源なのだと、多くの自治体は気づき始めている。新聞によると06年度の兵庫県の芸術文化経費は55億6000万円、滋賀県が21億5000万円。それに対して、08年度の大阪府は1億5000万円(>_<) それも09・10年度には3600万円になるとか。ほんまかいな!と、唖然とします。
で、御堂筋のライトアップに20億円ってか?そりゃ、ないでしょう。もっとも、この案、「ぼくはケヤキ並木のイメージだったのに、御堂筋はイチョウ並木でした」ということで保留となり、約9000万円かけてイチョウ並木でどうなるのか実験するんですって。

同時に、彼が掲げる「大阪ミュージアム構想」とは、いま残っている歴史的な建造物やまちなみをライトアップや石畳などで“展示品”として演出するという、なんとも皮相な案。形だけカッコつけようとするのは、まさにハコモノ行政の感覚。ミュージアムとは何なのか、文化・歴史とは何なのか、地域の活性かとは何をすべきか、まったくわかってないんですね。
たしかに財政再建は必要だし、彼しか出来なかっただろう大胆な改革には評価できる部分もあるのですが、いったいどういう判断基準と将来ビジョンをもって、施設や事業の存続・廃止を決めているのかがわからない。金勘定の帳尻をあわせるために、高齢者・女性・子供、そして文化という弱者を切り捨てる。お金の削り方と使い方が、間違ってるように思えてなりません。

それでも、いまだ支持率7割超なんですよ。ミーハー的な若い女性支持者が多いのかと思いきや、50〜70代の男性の支持率がけっこう高い。むしろ女性の方が本能的な危機感を抱いているように見受けます。大阪の飲み屋さんで、50代の男性客が「あれは、オトコのロマンだ!」とのたまったのには唖然としました。千夏さんの言う「新男権主義」、なるほどと思います。

いちばんの問題は、大阪府の財政が、あんなにヒステリーになるほどの危機なのかという点です。彼が言うほどの赤信号ではないという指摘が、学者達だけでなく、彼の支持母体である自民党大阪府議団や知事ヨイショが続いたマスコミからも、最近あいついでいます。だとしたら、いますぐ慌てて捨てなくても、時間をかけて改善できるものも少なくないはず。そうした正確な状況分析も根拠も明らかでないまま、一方的に彼に煽られて、エライコッチャと府民が思ってしまっているだけだとしたら、それこそエライコッチャです。
ある先生が「文化・歴史は永久耐用の備品であり、市民の財産である。一方、知事は期限付きの消耗品。消耗品が大事な備品を簡単に捨てるなど、僭越である」とおっしゃっていました(^_^;)長年の間たまってしまった無駄な備品はどんどん処分すればいい。でも、無駄な備品と大事な備品は、ケヤキとイチョウみたいに間違えないで、慎重に判断してほしいものです。


子供たちで賑わう大阪府立弥生文化博物館