第88回 ■発電より省電!■

佐古和枝(在日山陰人)

はい!よくぞ、聞いてくださいました。サコは、風車に戦いを挑むドン・キホーテ(^_^;) 美しい海岸や森のなかにそびえる無機質な風車を見ると、神経がザラつくんです。最初の衝撃は、私たちが保存運動をした妻木晩田遺跡。日本海を間近に望む丘の上に営まれた弥生集落から海を見晴らす景観は、国引き神話そのものであり、そりゃもう感動的なんです。ところがある日、遺跡の麓にポツンと風車が出現。あれよあれよという間に、美しい海岸沿いに15機もの風車が林立しました。せっかくの景観は、だいなしです(>_<) 
歴史的な意味をもつ景観は、貴重な文化資源です。風車をつくるにしても、もうちょっと場所を考えてよ、と思っていた頃、出雲神話の舞台ともいえる島根半島に日本最大の風力発電所を建設するという。宍道湖に沈む夕日の美しさは、まさに出雲が“神話の国”だと思わせるほど感動的なのに、その背後の島根半島に26基もの風車が林立するんですよ((+_+)) すぐそばの出雲大社には全国から神様が集まるというのに、風車が神様を吹き飛ばして近寄れなくなるじゃないですか(^_^;)

それで、地元住民の人達とともに反対運動をしました。千夏さんや永六輔さんにもご協力いただきましたね。残念ながら、今年初めに工事着工。嗚呼・・・
地元は風力発電による経済効果を期待しています。では、ほんとにお金が儲かるか。風車の耐用年数は18年前後と聞いています。そして、計画通りに発電できたとしても、減価償却に15年ほどかかる。でも、回ってない風車もよく見かけます。おまけに雷が落ちて、落雷の修理に5000万円!となると、売電で金儲けっていう目論見も、絵に描いたモチです。
風車が環境に優しいなんていうのも、マヤカシです。風車建設のための進入道路建設など、どれほど自然破壊・遺跡破壊をしていることか。アメリカの調査では、1台の風車で1日最低1羽の鳥が死んでいる。1年間に風車1台で最低365羽を殺す。そんな風車が何十、何百もあれば、どれほどの鳥が犠牲になっていることか。

人間だって被害を受けています。よく知られているのは、低音波騒音。夜中にもブーンブーン、ギーギーと音がする。その他、不眠・めまい・吐き気・肩こり・イライラ・頭痛・手のしびれ・耳鳴りなどの健康被害が多発しています。また、ブレード(風車の羽根)に太陽光が反射して、家の中にチラチラと光がさすのでイライラするとか、ブレードの先端の氷が落下して危ないとか、テレビの画像が乱れたり携帯電話がつながりにくいなどの電波障害も出ています。
それに、耐用年数を過ぎた風車、誰が責任をもって撤去してくれるのでしょうか。風力発電の先進地であるヨーロッパ諸国では、耐用年数の過ぎた風車が巨大産業廃棄物となり、幽霊のように林立しているそうです。想像しただけでゾッとしませんか?

そんな風車より、いま実用化が進む小型水車発電に注目です。直径20cmほどの水車で、風車1台分の発電ができるのだそうです。風車1台ン億円ですが、水車の設置は10万円程度。これなら景観も環境も壊さず、撤去も簡単です。風車は、痛恨の失策っていうことになるんじゃないかなぁ。
「でも、原発よりマシ」という意見もあります。そうじゃない。私も原発には反対なのですが、代替の自然エネルギーとして風力発電はよくない、という話なのです。そもそも発電量を増やすことより、電気を使わない努力が先でしょう。パリの夜道は暗かった。「これでも明るすぎると住民からクレームがでてるんですよ」とパリに住む友人が笑ってました。ドイツの厳しい環境対策は、よく知られていますよね。風力発電の先進地は、「エネルギーを浪費しない努力」もちゃんとしています。それに比べて日本では、まばゆいほどに明るい夜の街、夏に寒すぎ冬に暑すぎる電車や建物など、垂れ流しのように電気を使い放題にしてるんだから、いくら発電量を増やしても、ザルで水を受けているのと同じだと、サコは思います。
なにも縄文人に戻れ!というつもりはないけれど、せめて夜は電気を消して、寝ろ!おっと、われわれも明け方まで原稿を書いたり、PCゲームで遊ぶのは、ほどほどにしましょ〜ね、千夏さん(^・^)


出雲の風力発電計画完成予想写真