あんなこんなそんなおんな・・・・・昔昔のその昔 第80回

■夫より父・兄弟!?■

佐古和枝(在日山陰人)

あらら、ヌリノミの話、千夏さんと網野先生の発言がゴッチャになってたみたいですね。失礼しましたぁ〜m(__)m でも、網野先生がわが意を得たり!って感じで興奮気味に千夏さんに賛同された場面は、感動モノでした。
さて、久しぶりにオンナの話になったので、もう一つの「目からウロコ」話を一席。この連載の34回で、古墳の主も「なんとなくオトコ」だと思ってしまっている場合が多いという話をしました。ずっと以前に千夏さんにそんな話をした時、「実際に人骨でオトコだと確認できた古墳って、どれくらいあるの?」って尋ねられましたよね。それが気になって、ぼちぼちデータを集めていたんです。そんななかでの発見!

同じ棺に男女がペアで葬られているという場合、つい夫婦だと思うでしょう?それが、どうやらそうでもないらしいんです。九州大学の田中良之先生は、遺伝性の強い歯冠計測によって、古墳から出土した人骨の血縁関係を調べました。この方法、現代人のデータで確かめてみても、かなり有効なんです。その結果、5世紀半ばまでの古墳の同棺埋葬は、男女を問わず血縁関係である可能性が非常に高い。つまりキョウダイ(姉弟、兄妹も)または親子なんですね。
同棺埋葬は2人以上の事例も多いのですが、父と娘・息子というケースでは、なんと娘に出産経験があったりするんです。つまり、今風に言えば結婚・出産しても、死んだら実家のお父ちゃんの墓に葬られる。たぶんお母ちゃんは、実家の墓に入ってる。それが5世紀後半以後になると、横穴式石室や横穴墓が登場し、1つの古墳で数人から10人以上も埋葬されます。そこに、血縁でない女性が一人加わり始める。血縁ではない女性は、人骨の年齢からみて母親なんですね。やっと、夫婦合葬という形がでてくるわけです。ただし、夫婦であるのは第1世代の「父・母」のみで、息子たちのヨメは入らず、実の娘は入ってる。第2世代のヨメたちは、まだ実家の墓に葬られているんですね。このあり方は、古い段階の戸籍(息子たちの嫁を記載しない)とも一致します。夫婦は同じ墓に入るのがアタリマエ・・・ではなかったのでした!

たしかに記紀や『延喜式』に記載された天皇と皇后の墓の場所も、奈良と大阪というように、まったく別な場所に造られており、「皇后の出身氏族の根拠地であろう」と説明されています。
記紀を読んでいると、「古代のオンナは自立していた」と思える話がいくつもありますが、田中先生の研究によると、父系血縁の繋がりはかなり強いことになります。このあたりをどう考えるか。また新たな宿題が出てきました。