あんなこんなそんなおんな・・・・・昔昔のその昔 第75

■お国いちばん■

中山千夏(在日伊豆半島人)

楽しく実のある旅行でよかったね (^o^)

私もちょっと歴史探検してきたよ。先日、佐賀へ行きました。人権集会の講演。
時間があったので、佐賀城跡まで散歩しました。

ところで佐賀は三年ぶり。
三年前には無かったものができていた。
佐賀県立 佐賀城本丸歴史館。
建物自体がすごい。17世紀初頭に始まる鍋島佐賀藩の居城、本丸御殿の、1838年(天保9)バージョンを復元した。それが博物館。つまり、建物自体もひとつの展示物になってるのね。誠実にも、復元資料のない内装は「白紙」状態で、絢爛たる襖なんかはないんだけど、空間そのものを味わい、建て方を見るのはとても興味深かった。

展示物もなかなかおもしろかった。幕末関係が充実していた。
私、幕末は苦手だったんだけど、今度書いた本で(おかげさまで無事脱稿)調べなくちゃならなくて、ちょっと齧ったでしょ。そうすると、興味が持てるのね、幕末関係にも。たぶん、齧る前より倍ぐらい楽しめたな。

そこで目が点事態にでくわしたのよ。
咸臨丸についての資料と解説があった。
咸臨丸といえば、幕末のキーワードのひとつでしょ。私でさえ、名前は知ってた。そして、アメリカへ往復したあの咸臨丸といえば、勝海舟に福沢諭吉、これも有名だよね。今度の私の本では咸臨丸は重要なので、もうちょっと詳しくなった。
たとえばアメリカ側は軍艦奉行木村をアドミラル(提督)、勝海舟をキャプテン(艦長)と呼んだ、とかね。福沢には特に肩書はない、とかね。

で、佐賀城本丸歴史館ですよ。なんと、咸臨丸関係の解説のどこにも勝海舟がない! どう見てもない! 乗員については、何人かの佐賀藩出身者が写真入りでクローズアップされているだけ。

佐賀の事情通の友人にこれを話した。彼女は、少しも驚かず、「ええ、ええ、そう、そう。こちらじゃ、勝海舟なんか、なんよ、土佐の下級武士が、みたいなもんだから」と言い放った。わたしはうなった。
すごいんだね〜郷土意識って。
それにしても勝海舟だよ。一応キャプテンだったんだよ。「勝海舟も乗っていた」ぐらいの解説はしてやりゃいい、と思うのは、ヨソモノ感覚でしょうか (^_^;

得たり、と思ったのは、国家感覚がいかに歴史の短いものか、ということ。まだ日本人は幕藩体制なのね、感覚的には。そのほうがわたしは好きだ。安全だし。国家は軍備持ってるから、愛国心がぶつかると危ない。佐賀県なんかは軍備も交戦権もないから、郷土愛がぶつかっても、まず戦争にはならないものね。