あんなこんなそんなおんな・・・・・昔昔のその昔 第5回

■チャランケ知ってる?■

中山千夏(在日伊豆半島人)

30年ほど昔、「チャランケ」を知って大いに感激したのを思い出した。小峰書店発行「小学生日本の民話」全15巻の第15卷『キツネのチャランケ』(編著=萱野茂)を読んで知った。その第15卷は「北海道」編と銘打たれているけれども、つまるところアイヌ民話集なのね。だから本当は「アイヌモシリ」編とでも言うのが正しいかもしれない。
それはともかく、チャランケの話。昔、アイヌの人々は、モメゴトがあって対決する時、必ずまずチャランケから始めた、という。その本ではチャランケは「談判」と訳されており、その実態は、対決者(やその代表)が向かい合って立ち、話術の限りをつくして相手を説得するというもの。まさに話し合いによる紛争解決なのだが、「三日三晩続くこともあった」とか、「より美しい真実の言葉を話したほうが勝つ」とかいう話を読むと、チャランケとは、暴力の代理としての「言葉戦争」などではさらさらなく、言葉の対決からさえ暴力性を払拭して、徹底的に暴力を回避しようとする高度な文化だったことがわかる。
こういう文化を持つことができるなら、人類も捨てたものじゃないね。