あんなこんなそんなおんな・・・・・昔昔のその昔 第45回

■ヤリイカがヤル話■

中山千夏(在日伊豆半島人)

思い出すなあ!!
昔、「驚異の世界」というドキュメンタリー番組(日テレ系)のナレーションやってた。楽しかったよ〜、動物の生態、いろいろ見られて。
革新自由連合作ったらクビになっちゃったけどね(^o^)

ある時、ヤリイカの交尾場面があった。画面中、何百匹ともしれないイカだらけ。いやあ盛観だった。
その場面のナレーション、台本にはこう書いてあった。
「ヤリイカは一夫多妻です」
ふうん、と思って見ていたんだけど、あれれ? おいおい、そうか〜?
たしかにオスは手当たり次第にメスをつかまえて交尾している。ところが、メスのほうも手当たり次第にいろんなオスと交尾しているではないか。こりゃ、メスから見れば一妻多夫。客観的には・・・・・・
「ねえ、これ、一夫多妻じゃなくて、乱交なんじゃないのお?」
え? となったディレクター、画面をまじまじ見直して、
「あああっ、そうですね、乱交です、いや、失礼しました」
と汗を拭いてたっけ。ははは。
別に失礼じゃないけどさ。
もちろんディレクターは男。私も男だったら、「ヤリイカは一夫多妻」と誤報していたかもしれないって話。だからどの部署にも女性記者は不可欠なのよ、正確な報道を目指すのならね。

ことほどさように、あることがらの解釈、その報道には「自分の目」のバイアスがかかりやすい。
特に性行動の解釈には、男性の目、女性の目のバイアスがよくかかる。魏の使者は男性だった。魏史倭人伝は男性の目による報道でしょ。サコちゃんが言うとおり、その「一夫多妻」は大いに疑ってかかる余地があると思うよ。
『古事記』には、再婚する皇后が何人も、初代天皇記から見えてます。「誰それは父を次いで天皇となり、父天皇の妻を娶った」みたいな書き方だから、いかにも女には主体性がないように見えるけれど、そこがそれ、書き手=男性の目のバイアス。
実態は違ったと思うよ。一般の女はどうだったかわかりませんが、権力を持つ女たちは、文字通り政治的に性関係を活用していた、と私には見えます。再婚ではなく、多夫だった、それが違法でも非常識でもない社会がかつてあったのではないか、と思っています。

わ。長くなるけど、どうしても話したい。
一夫多妻を羨む男性がいる。オットセイなどを見ると「いいなあ」なんて目尻を下げる。ノーテンキだよね〜、感心する。
オットセイの群れをよく見てごらんっての。たしかに一匹のオスが全メスをゲットしてるわよ。だから、その周辺では、ほかの全オスが、あぶれてオッオッて泣いてるでしょ。きみ〜、どうしてそのあぶれるほうのオスになる、と想像できないわけ。確率からいったって、そうなる見込みが高いでしょうが。メスはいいのよ。全員が、群れで一番カッコいい強いオスの遺伝子を入手できるんだからね。
ま、なかなか番がまわってこない悩みはあるかもしれないけれど、ざっと言って一夫多妻は、メスには平穏、オスには厳しいシステムだってこと。うふふ。