あんなこんなそんなおんな・・・・・昔昔のその昔 第12

■命に感謝して■

佐古和枝(在日山陰人)

縄文時代の貝塚は、ゴミ捨て場。ゴミ捨て場は、当時の人達の生活を知る貴重な宝箱。そこから、縄文人達がどんな動物・鳥・魚・貝などを食べたかがわかります。
縄文人のいちばんの好物は、猪でした。その次が鹿。まだ牛や豚、馬もいないから、まぁいちばん美味しそうなお肉でしょう。
だけど、貝塚で出土する猪の骨は、みな成獣です。子供の猪は、食べていないのです。子供の猪まで食べてしまったら、猪が絶滅してしまい、結局困るのは自分達なのだということを、縄文人はちゃんと知っていた。だから、子供の猪は食べなかっただけでなく、丁寧に埋葬するなど、特別に大切にしていた様子がうかがえます。
貝も、そうです。ちゃんと成長した貝を採って食べています。まだ成長過程にある貝は、海に戻してやったのでしょうね。
まだ農耕を知らず、自然の恵みをいただいて生きていた縄文人は、自然に生かしてもらっていることを、ちゃんとわきまえていました。猪や貝が繁栄してくれることが、自分達の繁栄にも繋がる。だから、自分達は少しガマンして、他の生き物たちと共存共栄するというスタンスを守ったのです。おいしくないものも食べて、猪が絶滅しないようにした。
そして縄文人は、とても多くの信仰のための道具を作りました。自分達を生かしてくれる自然と神様に、「ありがとう」「おかげさまで」と、言い続けて暮らしていたのです。
そんな縄文人の心は、江戸時代までは確実に続いていたと思います。明治になって西洋文明を追いかけ始め、縄文の心はどんどん消えていきました。そして、自然環境は危機的状況に陥り、人間社会も窒息状態にあるように思えます。縄文人の心を、もう一度思い出してみませんか?